老若の各種漁師のみなさんからの聞き書き。
タイトルが『にっぽんの漁師』だけに、聞く対象が茫漠としており、「日本」の漁業の過去と現在が浅くわかるのだが、できればもっとディープに知りたいという読後感が残った。
自分も現在、漁業協同組合の組合員であるのだが、もちろん漁師ではない。
そもそも、自分の所属する漁協にプロの漁師は皆無である。
こうなった時点で、漁業権なるものが成立する実体的な根拠は消滅しているので、組合が持つ「権利」は、「利権」でしかない。
この本に出てくるのはすべて、れっきとした漁業者のみなさんである。
通読してみて、全体にほぼ共通している点が二つあると感じた。
一つは、乱獲により、漁業資源量が激減しているということ。
乱獲の原因は、漁具・漁法の画期的な革新により、文字通り、魚を一網打尽にすることが可能になった点である。
付言すれば、水揚げ価格を維持するためにも漁獲調節が必要であるにもかかわらず、政府による漁獲規制が現状に追いつくのがやっとである。
加えて、漁業における「グローバル化」がすすみ、販売可能なあらゆる魚種が世界的に争奪されていることが、合理的な規制を困難にしている。
魚が減ったもう一つの原因は、陸地からのミネラル分流入が減少し、各種化学物質流入が増加して海水汚染が進み、磯・海岸の護岸や埋め立てにより、魚の生息環境が悪化したことである。
そういう中で、これからの漁業がどうあるべきか、この聞き書きの中に、答えは見えない。