主として町工場における金属加工現場のあれこれについて語り、部品加工がどれほど人間の手先に依存しているかを書いた本。
多くの人は、もの作りをしているのはメーカーだと思っているかもしれない。
メーカーとは maker すなわちものを作っている主体と思いそうだが、商品のブランド名を名乗っているメーカーは、多くの場合、設計と組み立てと販売を担当しているようだ。
このうち設計には強力な技術力が必要だから、本社の開発部門が総力をあげるのだろうが、コスト削減のために、組み立て工程を海外へ移す企業が多い。
だが、著者の一連の本を読んでみれば、もの作りの核心部分は、部品加工だということがわかる。
できそうにないものを作るのは、不可能を可能にすることである。
不可能を可能にするのに必要なのは、カネではなく、職人的な感覚と熟練と発想の柔軟さである。
「日本」のもの作りを再生させるために、円安が必要だとか、法人税の減税が必要だとか言っている経済人がいるが、そのような人は、財テクのことばかり考えているのだろう。