いわゆる雑草の生態についての、肩のこらないエッセイ集。
畑と田んぼを借りて、農作業に勤しむようになってから、13年ほどになる。
一般に口に入れられているような作物の作り方を、ひとわたりマスターしようとしている。
ところで、農作業の80パーセントは、草むしりだと思われる。
この本などを見ると、雑草を排除するなど絶対に不可能だと思う。
当地あたりでは、プロの農業者の方の畑には草など一本も生えてないことが少なくないし、新潟県あたりの水田には実際、雑草など生えていない。
畑の除草はなかなか困難だが、水田については、農薬によって防草することはそれほど大変でないらしい。
ただ、近江あたりの水田地帯を見ているとわかるのだが、自家用と思しき田んぼには、草が生えていることが多い。
不耕起栽培と称して、除草をしない栽培方法もある。
それでも作物ができることは理解できるが、栽培効率がおそらく、はなはだ悪い。
列島の農作業は、労働力集約的な点が、基本的特徴である。
小面積の圃場に労働力を集中的に投じて、土地の持つパフォーマンスをあげるのである。
棚田などは、その象徴的な風景である。
除草鎌で雑草の根を一本ずつこそぎ取る作業と、希釈した除草剤をじょうろで散布する作業とを比較してみる。
おそらく前者は、しゃがんだり立ったりしなければならないのに加えて、草をこそげる際に一定の腕力を必要とする点で、多少多く労働しなければならず、後者だと、除草剤をその都度購入する費用がかかるのと、土壌や作物が人工的な化学物質によって汚染されるリスクを覚悟しなければならない。
除草鎌で草を取っていたのでは、入梅から初秋にかけて、雑草がもっとも猖獗を極める時期には、雑草の伸びる速さに除草が追いつかない。
多少の投資で無農薬による防草をはかる道具として、防草シートなるものがある。
多くの雑草が発芽・生育するための必要条件である光を遮断するためのシートで、雑草の蔓延によって心が挫けそうな時期には、土壌汚染なしに草を抑える上で、強い味方になってくれる。
著者が、著名な警句を引きながら、雑草の生き方と人の人生を重ねあわせて、生態学の面白さを語ってくれるのも、楽しい。