三峯神社の宮司さんが書いたエッセイ。
神社本庁の役員などもされている方なので、本文の中には、「神ながらの道」とか、ちょっと近寄りがたい言辞も並んでいる。
しかし、書いてあることはおおむね、納得できることばかりである。
西洋思想を日本の現実にあてはめてあれこれ解釈し、説明できないところは、現実のほうがオカシイと考えるドグマ思想より、著者の神道思想のほうがまだ、現実的である。
自分の思考回路が近年、超保守化しつつあるのかもしれないとも思う。
ここでいう超保守とは、列島の自然環境に順応した暮らしのあり方といったものであり、とてもじゃないが、天皇制とかとは相容れない。
本書に言う、ヤマトタケル伝説や神がかった話なども、受け入れがたい。
しかし、神とは自然のことであり、神とともに日々を送るべきではないかという考えには、至極同感できる。
本書には、三峯神社の周辺についての記述も散見されて、興味深い。
江戸時代以来、三峯講が盛んになると、それにともなって宿や茶店、駕籠・尻押しなどの稼ぎも繁栄したという。
江戸方面からだけでなく、甲州や信州方面からも、おおぜいの参詣者が訪れれば、モノや情報も大いに移動する。
さらに、それらの人々の用をたすべき店なども必要となる。
三峯神社が地域の情報センターとしての役割を果たし、仕事を提供してもいたということがうかがえる。
奥秩父山塊の玄関口に位置しており、今年(2012年)から地元の宗教行事でもお世話になることになった三峯神社について、もっと多く知りたいと思う。