中世は、徳政令が出された時代だから、借金に苦しむ民衆を描いた本かと思ったが、土倉など室町時代の金融業者の実態を解説した本だった。
室町時代の京都周辺には、多くの金融業者がいて、活発な活動を行なっていた。
本書によると、彼ら土倉の多くは寺社の関係者で、比叡山・石清水八幡・北野など京都周辺の寺社が、純然たる信仰とは次元の全く異なる経済活動に関わっていたことがわかる。
彼らの金融活動は、権力とつながることによる栄枯盛衰があったとはいえ、カネや債権を転がすことによって利を得るというその実態は、現在と変わりない。
本書には、民衆レベルの金融実態については、書かれていない。
「正長の土一揆」あたりは、貧しい百姓を苦しめる土倉を膺懲したという印象で語られるが、それで正しかったのかどうか。
京都周辺以外の金融活動はどうだったのか。
京都周辺の寺社は、事実上営利集団とみなしてよいのかどうか。
そのあたりが、この本を読んだだけでは、よく見えてこない。