例によって雑文集なので、石原慎太郎に関する評論集といった書物ではないが、石原に関する雑文も、いくつか収録されている。
「・・・の人生」というほど綿密に石原慎太郎を検証した本ではないのはわかるが、今少し詳しく書いてないと、書名に偽りなしといえなくもない。
東京都民がなぜ石原慎太郎を圧倒的に支持しているのかという問題は、かなり興味深いテーマである。
石原慎太郎は果たして、東京都知事の職務に関心を持ってるのだろうか。
都庁にもあまり出勤してないという記事を読んだことがある。
東京都民が石原を支持する原因は、彼の居酒屋談義的な政治言説が、都民の平均的知的レベルに合致しているからだろう。
今年(2012年)に、名古屋市長が「南京事件はなかった」と発言すると石原は、すかさず「河村君の言うことが正しい」と述べて、とっくに論破され済みの居酒屋談義を並べたてた。
石原の居酒屋談義が「日本」の内外で問題視されるたびに、マスコミは、「中立的」な立場から、たとえば「名古屋市長が『南京事件はなかった』と発言し石原知事が『河村君の言うことが正しい』と述べた」と、「事実」のみを報道する。
石原のヨタ話に尾ひれを付けて増幅する報道はゴマンとあっても、彼の話がまともかどうかを検証しようとするマスコミが存在しないのは、どうしてだろう。
ともかく、石原のヨタ話は、思い出したように繰り返され、それは決して検証されることなく、マスコミに取り上げられる。
このことは、「日本人」、中でも東京都民の知的レベルを石原と同程度にまで引き下げることに貢献している。
すなわち、多くの「日本人」は、これといった根拠もなく、石原と同様の生半可な認識を植えつけられることになる。
彼の存命中はずっと、「日本人」の石原化が続くのだろう。