> 自分が現在暮らしているのは、たぶん「限界集落」だと思う。
ちゃんと住んでいる戸数も人口も、減っている。
今後、賑やかになる気配は、ない。
そんな集落に、元銀行員だというエコノミストが舞い降りてきて、山村の現実をビジネスの論理で組み替え、住民とともに「限界」を打破していくという筋立ての小説である。
読み始めてしばらくは、腹がたって仕方がなかった。
元銀行員が村を訪れた時の村人の反応などは、いかにもマンガチックで、人を馬鹿にしていると思えた。
もっとも、話の展開自体がマンガ的といえばマンガ的で、コミカルドラマのような感じである。
ただ、やはりマンガ的な形で登場する役場職員や都会のフリーター青年たちなど、今の「日本」の農山村を読み解く上でのキーパーソンは、すべて登場してくる。
山村の抱える問題を、今までに試された方法だけでなく、新自由主義的なやり方で処理し、山村の潜在力をビジネス化して造形していくという切り口は、とても現実的とは思えないものの、新鮮だったことは間違いない。
実際、自分の住む町でも数年前に、東京から来たという事業家か何かが、経営のはかばかしくなかったらしい町の温泉施設を使って、バイクのライダーを呼ぶという半官半民のプロジェクトを立ち上げたことがあった。
たぶん、うまいことを言って、役場を丸め込んだのだろう。
そのプロジェクトはみごとに失敗し、静かな街にバイクの轟音が響き、コンビニは繁盛していたみたいだが、温泉施設自体が閉鎖されてしまった。
この物語に出てくる集落は、町の力を借りるどころか、町から幾多の妨害を受けながら、事業を展開する。
このやり方は、間違っていないと思う。
結果的には、とても面白い小説だったが、やはり現実的でなく、テレビドラマのような作りものという印象を持った。