農業や山仕事に、主として信州で携わっている人々を取材したルポ。
とりあげられている方々は、地元に根ざして暮らしておられる方も、脱サラとか新規就農された方も含まれる。
本書が刊行された90年代と現在を比べると、グローバル化が一段と進行し、人・モノ・情報の一極集中も深刻化した。
周囲の状況を見るかぎり、山村の荒廃も、急展開しつつある。
一方で、グローバル化に対するラディカルな疑問を持つ人々も、多くなっているような気がする。
スローであることをよしとすることは、「変わり者の価値観」ではなくなってきている。
本書のサブタイトルに、「森に訊き、土に学ぶ」とあるが、それはこの列島において、ごく普通の生活者が、日々なしてきたことにほかならない。
それをしない暮らしがあっていけないわけではないが、それはやはり例外的なあり方というのが自然である。
特別な能力や努力が必要なわけではない。
身体を少々動かさねばならないだけの話である。