本書は今、ベストセラーなんだそうである。
著者はその現実を「ちっともうれしくない」と述べられている。
やさしい語り口で、原発と放射能がどのようなものであるか、説き起こしている。
いわゆる「専門家」の言ってることと小出氏の語りとの、決定的な相違は、自分の地位や名誉を気にしつつ話しているか、何もおそれることなく、自分の考えを述べているかという点である。
原発は、一度壊れてしまったら、取り返しのつかないダメージを日本列島と地球に与えてしまう。
小出氏が淡々と、原発の危険を語られるのは、個人の地位や名誉や体面と、地球や列島や子どもたちと、どちらが大切かについて、まったくぶれない芯をお持ちだからだろう。
本とは別のところで、氏は何度も、政治は嫌いだとおっしゃっている。
今のあらゆる政治家が、氏が無価値と考えられているものを、至高の価値と考えているだろうことは、誰しも知っている。
政治家はみな、自分のために政治にかかわっているのである。
氏が説いておられることのエッセンスは、原子力は技術的に全く未完であるということ、もともと制御困難なものが暴走したときに、取り返しのつかないことが起きるということに尽きる。
政治家や財界人がしばしば、どんな事態になっても原子力は制御可能であるかのように主張する。
彼らの論理には、「たぶん大丈夫だろう」「よくわからんけど何とかなるんじゃないか」「今すぐ破局が訪れるわけじゃない」「みんな大丈夫と言ってるし」「自分が責任とらされるわけじゃないし」「責任とれといわれてもどうしようもないし」という言い訳が、丸見えである。
原発の上に成り立つ「繁栄」など、虚構である。
幻の「繁栄」を求めて口角泡を飛ばす罵り合いをしている政治家の百言よりも、小出氏の「危ないものは作ってはいけない」という一言に数百倍の真実がある。
小出氏は、本書に関する番組(動画はこちら)の中で、自分について
37年間、最下層の教員なんです
私はその最下層の教員でい続けたがために誰にも命令をしないで
自分のやりたいことだけをやり続けることができたという意味で
最高のポストだったと思っています
と述べられている。
できれば、このように生きていきたいものである。