たいへん多くの著書を持つ醸造学・発酵学者による、発酵食についての概説。
発酵食についての啓蒙書でもあるらしく、文章にめりはりがないのが気になりはしたが、内容はとても面白い。
自分の家では、発酵食を比較的多く食べていると思うが、多忙化の進む世の中では、ファストフードの比重が多くなっているだろう。
畑には、落ち葉を発酵させて作った腐葉土をすきこんで、元気な土を作るようにもしている。
高度成長期以降、世の人々は、微生物を警戒する感覚をもつようになったと思う。
人の皮膚さえ、無数の微生物が生息してその機能が維持されているにもかかわらず。
目に見えず何をしているかわからない微生物は、殲滅の対象と考えられた。
微生物を滅菌するには、強力な毒物が使われるのだが、人工物は安心だが自然物は安心できないという感覚があるようだが、それには何の根拠もない。
薬物を使った「消毒」「防腐」処理が日常化すると、そうした処理のされていないものは危ないと思ってしまう。
まともな生き物であれば、危ないものと安心なものとを、本能的に、あるいは五感を使って判別するのだが、今の人間はそのような最低限の能力を減退させつつある。
当然のことながら、発酵食作りには手間がかかる。
毎日がとても忙しいので、微生物の面倒など、みてる暇がないのも事実だが、生き物としての感覚くらいは、維持していきたい。
味噌は自給、自家製パンも自給、納豆もたまに自給している程度だが、もう少し、自給の範囲を広げてみたい。
(ISBN4-14-084183-4 C1345 \830E 2004,5 NHKライブラリ 2011,3,4 読了)