『21世紀の資本』のサマリーを平易に説いたブックレット。
竹信三恵子氏の『ピケティ入門』が、「日本」の現実批判にもかなりのページを割いているのに対し、こちらは、ピケティのサマリーを提供することに注力している。
ピケティの議論から何を受け取るかは読者次第なのだから、入門書としては、本書の方がいいかもしれない。
さて、経済的格差の拡大はほぼ法則と言っていいということを、ピケティは論証した。
彼の一般的な処方箋は、累進課税とグローバル課税である。
それは一般論であって、具体的には、国ごとの事情により、バリエーションが必要だ。
ピケティがベストセラーになり(私は読んでないが)、彼の理論の正当性が国を超えて信じられるようになると、グローバル課税が荒唐無稽な夢物語でなくなるような気もする。
租税回避地は合法的存在であるかもしれないが、堂々と言えないような非道徳的な経済行為をなす場所である。
違法でなければ合法であるというのが法というものであるかもしれないが、非道徳的な行為をなすべきでないというのは、人間社会の不文律である。
非道徳的な経済行為は違法でなくても、恥ずべき行為であるから、そのようなことが起こらないようにしようというくらいの合意は、偉られるのではないか。
「日本」で累進課税に抵抗するのは現在の与党(自民・公明)だろうが、誰が見たって破綻しているトリクルダウン理論が未だにまかり通っていること自体が信じがたい。
政治の場がきちんと機能するようになる必要がある。
もっともそのためには、有権者のレベルがもう少し上がらなければどうしようもない。