日本国内における階層分化について、なかでも下層に属する人々について、詳しく分析している。
若いころ、社会学という学問の有効性がよくわからなかった。
もっとも、社会学についてしっかり学んだわけでなかったから、食わず嫌いというか、不勉強だったのだと思う。
この本を読むと確かに、下流社会に属する人々の嗜好・意識・買い物傾向・生活習慣・恋愛傾向などが有意に分析されている。
ここに記されている内容はおおむね、おそらくそうだろうと考えていたことが、より明確に論理化されていると思える。
そういう意味で、一読の価値ある書だと思う。
しかし、本書を読んでも、現今の階層分化が、どのような政治的・歴史的文脈のもとで作り出されているのかとか、問題解決の道はどうかなどについては、見えてこない。
本書の帯には、「だらだら」してたら、あなたは下流、というコピーが書かれている。
本書にそんな記述はなかったから、出版社側でつけたものだろう。
だがこれは、「だらだらしてるから、あなたは下流」と読めるコピーだ。
貧困が、政治や経済によって作り出されていると思われるのに、そのことは世間において、隠蔽されている。
貧しいのは、本人の努力が足りないからだと世間も本人もが考えることによって、生きていけなくなる人が、この国には膨大に存在する。
著者による下流社会固定化防止の処方箋は、国立大学の授業料値下げ以外は、現実性がないと思う。
貧しくても大学に入れるようにすることも大切だが、下流の対極に存在する、数少ない裕福な人々への課税を強化するなり、証券取引で得た利益のように非生産的な所得への課税を強化するなどして、貧困そのものを防ぐ手だてが重要なのではないかと思う。