『エビと日本人』の続編。
前著刊行後、日本はバブル経済とバブル崩壊を体験した。
グローバル経済が、誰の目にも見える形で展開するようになったのはバブル崩壊後だから、東南アジアのエビ養殖を切り口にグローバル化の実態を描き出した、先駆的な作品だった。
その後、台湾や東南アジアのエビ養殖は、過密養殖の弊害により、病気の流行によって大きく変貌したらしい。
エビを過密に飼うという発想は、コスト削減を至上命題にするという点で、また結局は薬品依存によって過密飼育を続けざるを得なかったという点で、いかにもグローバル的だ。
主流だったブラックタイガーの飼育が困難になった後、現在は中南米原産のバナメイが主流になったというのも、グローバルな話ではある。
かつて日本がエビの最大消費国だったが、現在は,産蝦国を除いてもダントツとは言えない。
エビ価格の低下に伴って、安価で低カロリーな蛋白源としての需要が拡大したのだろう。
エビに代わってミルクフィッシュの養殖に切り替えた養殖池も多いらしい。
変わっていないのは、生産者の貧しさが消費を支える構造だ。
今やインドネシア産のエビ天やエビフライが大量に輸入されている。
本書には、グローバル経済の弊害を緩和する取り組みとしてのフェアトレードについてふれている。
フェアトレードとは、生産者と消費者が極力ダイレクトに取り引きすることによって、生産者が受け取る代金を嵩上げするだけでなく、トレーサビリティを向上させ、食の安全をも確保しようということである。
この取り組み自体は、生産者の収入増につながるという点で、よいことだと思う。
しかし、東南アジアのエビを食べなくてもよいではないかという、基本的な疑問は、これだけでは解決されない。