サブタイトルに「岩魚と加仁湯交遊録」とある。
著者は、奥鬼怒岩魚保存会初代会長。
本書によれば奥鬼怒岩魚保存会とは、1975年に設立された会で、
1, 元気のよい本流または別沢の岩魚を再放流する
2, 渓流のゴミ拾い
3, 啓蒙用の看板立て
4, 源流域の禁漁化をめざす
などの活動をしているという。
若干の疑問もあるが、荒川水系渓流保存会の活動と重なる点が多く、共感できる。
疑問というのは、イワナの遺伝子情報は水系ごとに異なる傾向にあるだけでなく、同じ水系にあっても支流ごとに異なっているというということが明らかになっており、その知見からは、同じ水系であっても、別の支流からの移植放流には慎重であるべきではないかという点である。
もっともイワナの遺伝子解析が画期的に進んだのはここ数年のことであり、自分自身も一時は、イワナの形態的特徴を絶対視していたのだから、別沢の岩魚を再放流していたことに目くじらを立てるのは筋違いというものであり、1975年という早い時期に、在来イワナの保護活動を始められた先見の明こそ、敬服すべきだ。
奥鬼怒で竿を振ったことが一度だけある。
丸沼から湯沢峠を越えて日光沢へ降りて幕営。
その時少しだけ毛鉤で沢を叩いたのだが、もちろん反応はなかった。
しかし、とてもいい感じの沢だった。
別の山行で登った鬼怒沼も天上の楽園のごとく、静かで気持ちのよいところだった。
いつか奥鬼怒ネイティブに出会ってみたい。
2008年の現在、在来イワナの保護活動を行っている団体のネットワークはまだ存在しない。
日本は、イワナ生息地の南限であり、それだけに面白いイワナが各地に存在する。
にもかかわらず、在来種への保護はほとんど行われていない。
日本在来イワナネットワークができないものだろうか。