ガラードの『史上最悪の旅』が、2006年末現在で未読のままだ。
何度か読み始めたのだが、まとまった時間がとれないので、文庫版1000ページ近いこの大著を読み通す根性がない。
で、あとから手に入れた『南極点』を先に読んでしまった。
読み終えたあと、極上のエンターテイメントを堪能した幸福感を感じた。
冒険譚がかくも面白いのは、それが究極的な非日常だからだろう。
自分を日常の中で実現するのはもちろん大切だが、日常が自己目的となってしまっては、生活はつまらない。
手が届きそうで届かないものを手にするために、どのような戦略を立て、生起する問題にどう対処するか。
ひとつ間違えればすべてが無に帰する緊張感のもとで、限界へのアプローチが続く。
この本には、極地への一番乗りという冒険・探検に伴う危険や困難をどう乗りきったかが、さらりと描かれているが、その「さらり」がとても格好よい。
冒険に必要なのは、体力や技術ははもちろんだが、徹底的なシミュレーション、装備、応用力、補修技術、判断力に加え、冷静さや楽天性でもあるのだと思った。