回想記である『言い残したい森の話』以上に、森に関する蘊蓄とヒントに満ちた本。
森に関する語りの部分には、知的刺激に満ちたテーマがあふれています。
上記の本を読んだときにも感じましたが、学問というのは決して難解なものではないということがよくわかります。
確かなデータの裏付けを持つ確かな論理ほどわかりやすいものはありません。
わたしは一アマチュアとして、日本の自然と暮らし方を理解しようとしています。
基本的知識として知っておかなくてはならないのはまず、日本列島の地形的ななりたち。
そのへんはこの本には出てきません。
次に日本列島をめぐる気候。
これはたいへん複雑ですが、東アジアの海流と風の動きがわかれば、とても面白い。
これはこの本のあちこちに出てきます。
それが理解できれば植生がわかります。
そこまで行けば、土地の理にかなった人の暮らし方とは何なのかが導かれるはず。
林学には、日本列島における理にかなった暮らし方にとって、森はどのような意味で不可欠なのかを明らかにしてほしいところです。
森は人間のために存在しているのではありませんが、日本人が日本の自然の一部であり続けようとすれば、森の恵みに依存して暮らすしかないからです。
最大のヒントは、これまで数千年にわたってこの列島に暮らしてきた日本人の過去の暮らし方にあるでしょう。
このあたりは研究分野としてはまだ、歴史も林学も民俗も手をつけていない、荒野に近い状態なのではないかと思います。
仕事と遊びと農作業の合間に、こつこつ勉強を重ねていきたいと思います。