かつて立花 隆氏が『青春漂流』(講談社文庫)で紹介されたその道のプロたちの生きざまは、衝撃的でした。
立花氏の本に登場する仕事師たちが比較的若く、ぎらぎらと輝きながら道を切り開いていたのに対し、この本に出てくるのは、リタイア前後のベテランたちです。
立花氏がとりあげた仕事は、かなり希少な部類に属するものばかりでしたが、こちらに紹介されているのは、仕事としては決して珍奇な部類に属するものではなく、多くはもの作りを担ってきた職人的な人々です。
エンターテイナー立花隆氏の作品はすばらしいものでしたが、今読みたいのは、本書のような本です。
それなりに才能のある人が、通常以上の努力や精進によってやや特殊といえる仕事を極めていくストーリーは、人生の上昇ピークである青春期をいかに燃焼させるかが主たるテーマです。
一方で今、仕事の現場は荒廃しつつあります。
グローバル経済=新封建制の拡がりが、その底流に存在します。
早くつくる。
安上がりにつくる。
どんどんバージョンアップすることによって、買わせたものをさっさと陳腐化する。
これに対応し労働の現場では、不安定雇用・「成果主義」・人間の部品化といった流れが急激に進行し、労働者のプライドやモラルまでが崩壊しようとしています。
本書に登場する仕事師たちの言葉は、ありふれた言葉だけれど、それが働くということの基本だから、重みがあります。
働くということは、自分の仕事に対し、どこまでも責任を持つということでしょう。
グローバル化は、ものづくりの自己破壊現象とも見えてきます。