本書の最後にもふれてありますが、著者は無着成恭編『山びこ学校』の生徒の一人です。
この国は、国土の大部分を山(傾斜地)によって占められています。
こういう国が持続していくために、どのような暮らし方が必要か。
わたしは、そのように問題を立てたいと思います。
ところが、現実のこの国は、弱肉強食かつモラルの破綻した資本主義社会です。
わが亡きあとに洪水は来たれ!
経済力は政治上の権力に等しく強力で、個人に対し生殺与奪の権を握っています。
資本主義生成期には、経済や政治のモラルがここまで堕ちるとは想像されませんでしたから、楽観する余地もまだありました。
国を立て直す上で柱になるのが、農と森林であることは明らかです。
ものを考える能力のある人にとって、そんなことは自明であるのに、浅はかな権力者は眼前の利に走って恥をさらすばかりか、まともに考えようとする者を嘲笑し、小判鮫メディアが周りで囃したてます。
馬鹿らしくてとてもやってられないのが現実ですが、静かな声で理を語る必要はあるでしょう。
著者は時に嘆き節になりながらも、この国での暮らしのあるべき姿を明確に定立されています。
山村の暮らしをどうにかして受け継ぎたいものです。