1938年に創刊されて以来、読書家に対し、岩波新書がどのようなメッセージを発信し続けてきたかを分析した本。
著者が岩波新書のすべてに目を通されたのかと思いましたが、最近発刊されたうちの一部はごらんになっていないようです。
しかしそれでも、自らのご専門とは全く異なる分野に目配りのされた、2000数百点もの岩波新書のほとんどをお読みになったようです。
岩波新書のすべてを読破することを自分に課していた友人がいましたが、問題は、そこに集積された間違いなく良質な「知」をいかにして自分の世界観の一部たらしめていけるかということでしょう。
岩波新書を読むと、そこにはいつも、ぎらぎらした課題意識が感じられ、いたく刺激を受けるのでした。
本書には、それぞれの時代の課題に切り結んできた岩波新書の編集ポリシーの流れが概観されています。
わたしは折々の歴史の流れに流されながら、貧しい読書を続けてきたに過ぎませんが、本書を通読することによって、自分が格闘してきたものが何だったのかを知ることができました。
初めて手にした岩波新書は青版、一冊170円の時代でした。
それが230円に値上がりしたときには、かなり痛い思いをしたのを覚えています。
本書を通じてまたも、おそらく一生かかっても読み切れないであろう、厖大な「読みたい本リスト」ができてしまいました。