きのこの世界に分け入っていくと、ミステリアスで驚くべきことに、しばしば、ぶつかります。
各種きのこの、色、形、発生のようすなど。
きのこの、不思議な発生のし方の究極は、冬虫夏草のそれではないかと思います。
じつは、冬虫夏草をほとんど、見たことがありません。
しばしば、山や渓に出かけているにもかかわらず、この仲間のきのこをあまり見ないのは、見つけるにあたっての、ちょっとしたコツを知らないために、視野の中にあっても、目に入らなかったのでしょう。
この本を読んで、たぶんそうだったのだ、と思いました。
不勉強なわたしは、冬虫夏草は、生きた昆虫に感染して、その虫を殺し、虫の体内で蔓延したあげく、きのこ(子実体)を発生させるのだということを、初めて知りました。
どちらかといえば、控えめな暮らしをしている、きのこの仲間の中で、こんなアクティブな生き方をしているのも、あったのですね。
冬虫夏草の生態は、まだ、よくわかっていないそうです。
この本には、埼玉県飯能、鎌倉、東京などで見られる、各種冬虫夏草のことが、詳密なスケッチとともに、わかりやすく語られています。
ことしは、なんとなく、冬虫夏草にも会えそうな気がしてきました。
著者は、わたしと同業者です(専門分野は別)。
子どもたちといっしょにきのこを探し、きのこから学ぶことができる職場環境が、とてもうらやましく思いました。
(ISBN4-532-52053-3 C0045 P1500E 1996,5 日経サイエンス社刊 2000,4,13 読了)