この本は楽しい本です。
『週刊金曜日』に、長らく連載されてきた漫画を、一冊にまとめたものです。
ニフティサーブの「週刊金曜日読者会議室」(nifty:FBOOKR/MES/8/)で、これに対しいろいろと批評してきた者としても、とてもうれしいです。
ちなみに、『週刊金曜日』の創刊以前からの読者です。ハイ。
ここに描かれているのは、1938(昭和13)年から1941(昭和16)年にかけての、信州伊那谷の、とある村で小学校に入った少年(ショウちゃ)が、どのような野山を駆けめぐり、どのようなものを口に入れ、それをどのようなものとして記憶しているかということです。
堀田あきお氏の漫画は、石坂啓さんとの共作『キャリング』(小学館)以来ひさびさに読みましたが、子どもたちの表情がとても可愛らしくて、読むのが楽しみでした。
また、原案者の本多勝一氏の監修がしっかりしているせいか、野原や河原の様子がとてもしっかりと描きこまれているのも、感心します。(前記読者会議室では、サルナシのツルをもっとしっかり描けとか、ハツタケの後ろには松の木を描けとかいろいろ書きましたが)
私(1956年生)らが、子どものころには食べなかったものがたくさん紹介されています。
それにしても、私が育った水田地帯で見たもの、体験したことをもう少し克明に覚えていたらなぁ、と感じました。
今からでも遅くないから、渓流や山で、見たもの・感じたことを、なるべく詳しく記録しておこうと思います。
さて、戦中世代たる本多少年は、こういうものを食べながら育ちました。
高度成長期に育ち盛りを迎えた私らは、CMに踊らされつつ、しだいに食べ物に対する基本的な警戒感や信頼感を失っていきました。
CMに出ているものに安心し、素朴で味わい深いものを軽んじるようになったのです。
行き着くところが『失われた未来』であることがわかり、私は引き返しましたが、世の大勢はそうでもないようです。
『食の基本』について、もう一度しっかり考えてみませんか。
(ISBN4-02-257359-7 C0979 \1600E 1999,5 朝日新聞社刊 1999,4,24読了)