鎌田氏の本を読んだのは、前著『白神山地に生きる』(ISBN4-560-04008-7 C0040 P1700E 白水社 1987,6刊)に続き、2冊目です。
鎌田氏が、読書ノート(44)で取りあげた根深誠氏と、コアエリアへの入山規制をめぐってきびしく意見対立されていることは、ご承知のことと思います。
この問題については、もっと勉強してしっかり考えてみたいと思いますが、私自身はというと、鎌田氏の主張に共感する部分が、たくさんありました。
共感点の第一は、白神の持つ人類史的、普遍的な価値を見すえながらも、山麓で暮らす人々が一方的に犠牲になるのでないような保護のあり方を模索されていることです。
鎌田氏の「町おこし」への模索が、観光に偏しているという印象は否めません。
私は、山村が自立して、都会と対等に成りたっていくような社会を作るべきだと思っています。
観光という発想は、どうしても都会に対して卑屈になってしまうような気がするのです。
しかし、なにもしなければ、なにも残りません。
都会に対して卑屈にならない観光があり得るかもしれません。
この本に紹介されている「自然学習観光」からは、学ぶべきものがありそうです。
鎌田氏への共感点の第二は、子どもたちに、自然の中で学び、遊ぶことの楽しさを伝えようとされている点です。
現在の日本の教育は、巨大なマインドコントロール装置です。
ここでは、競争に勝つことが至高の価値とされ、敗者は勝者に服従しなければならぬということを、繰り返し、繰り返し、教え込んでいます。
文部省や教育委員会や校長などが、バイブルのごとく振り回す、学習指導要領なる国の教育指針には、いかにして日本の森や川を復活させるかを教えるなどということは、ちっとも書かれていません。
いまこそ、静かに未来を思い、地球と日本人の行くすえを考えるべきときだというのに。
どうやって森を教えるか。
これは、なかなかむずかしい問題です。
子どもの発達段階に即した学習課題や学習形態が工夫されなければなりません。
それにしても、鎌田さんのこの本に引用されている子どもたちの作文は、珠玉のような作品だと思います。
遊んだり、観察したりする中で、理性と感性を磨いているのだと思います。
ここで紹介されているのは少年団の活動ですが、課外活動と学校教育をリンクさせて、知的で感性豊かな子どもたちを育てたいものだと思います。
(ISBN4-560-04065-6 C0040 P1700E 1998,8 白水社刊 1999,1,17読了)