山村が、どんどん崩れて行きつつあります。
その流れを止めるすべは見つかりません。
これは、日本人の人生観の問題です。
大量に消費することを至上の美徳とする、今の日本では、持続可能な経済・社会というような発想は、どこからだって出て来やしません。
どんな破滅が待っていようと、今の消費生活を維持したい。いや、もっと消費したい。
高齢化社会が不安だといいます。
高齢化社会が不安なのは、高齢になったときに、今の消費生活が維持できなくなりそうだからではありませんか。
自分で食べるものを作り、森や川に囲まれて生きていければ、なにが不安なものですか。
「景気対策」と称して、借金で大盤振る舞いのし放題、あわせて国民の大切な財産である山や川や海をつぶそうとするような連中に政治を任せておくなんて、詐欺師に財布を預けるようなものです。
秋田や青森の山里でも、人々は実利的に自然と関わってきたのです。
山や川からの恵みを受け、山や川なしには生活できない生活をしてきたからこそ、山や川の異変に気づくことができるのです。
山や川が復活するためには、そうした暮らしをきちんと引き継がねばならないと思います。
なにも不便を堪え忍んでランプで暮らすべきだと言っているわけではありません。
山里でも都会に劣らずこころ豊かな暮らしができ、大量消費ばかりが人生でないという価値観が、もう少しポピュラーになってほしいと思うのです。
根深氏も、「自然とともにあった精神や文化が、あらがいがたい圧力によって追いやられ」ていると書いています。
このことばに深い共感を覚えますが、そのような「あらがいがたい圧力」と戦う勇気が、自分にほしいのが本音です。
(ISBN4-408-00746-3 C2026 P17004E 1998,4 実業之日本社刊 1999,1,9読了)