この本は、学者、財界人、政治家、元プロ野球選手など、24人のかつての昆虫少年たちへのインタビューです。
「昆虫を採集する、あるいは観察するという行為を通じて、人は何を学ぶのか」という魅力的な帯広告にひかれて、一気に読みました。
決してつまらなくはなかったのですが、読後感は釈然としませんでした。
その第一。
元昆虫少年たちは、なぜ、「珍品」などという下司(ゲス)な言葉を乱発するのでしょう。
読んでみると、「珍品」蒐集家の多くは、標本を金で買ったり、売ったりしているのですね。
24人の中には、標本商人までが、含まれています。
要するに、こういう人々は、単なるコレクターなのだと思います。
以前、夏の大菩薩峠で、アサギマダラを何頭も何頭も捕っている男たちを見かけました。
あれも、そのようなコレクターだったのでしょう。
その第二。
彼らが、昆虫少年(少女)だった時代に、昆虫採集からどういうことを学んだのかが、はっきり見えないのです。
虫好きだったことが、その後の生き方にどのような影響を与えたのか、知りたかったのに。
かつて虫好きだった、今でも虫好きである、今は外国にまで出かけて虫を捕っている、という人生に、私は魅力を感じません。
虫たちのおかれている現状を、どうみるのか。
虫たちを守るために、どう闘うのか。
元昆虫少年の私にとって大事なのは、そこなのです。
(ISBN4-02-330227-9 C0045 P1200E 1996,5 朝日新聞社刊 1998,3,25読了)