山歩きをしていて、山小屋ほどありがたい存在はありません。
それを痛感したのは、暴風雨の中、単独で甲武信小屋にお世話になったときです。
小屋のみなさんは、登山者の便宜を図っているだけではなく、登山道の整備をしたり、山と自然について登山者に語ってくれたりしています。
北アルプス核心部の小屋などには、これまたボランティアの医師のみなさんが、山小屋と協力して、緊急医療に携わっておられます。
登山者と山小屋のあいだには、日本で大衆登山が始まって以来、数十年に及ぶ歴史が存在するのです。
山がいろいろな意味での環境破壊から守られ、われわれ中高年を含めて、日本人すべてに開かれた存在である背景には、山小屋の存在があるのです。
累積赤字に悩む林野庁は、そうした歴史をすべて無視して、山の遊園地化に乗り出しました。
今までのようなスタイルの登山者と、今までのようなスタイルの山小屋を排除し、あの私鉄資本が考えつきそうな、金もうけ中心の国有林経営が、画策されています。
それは、国有林の分割民営化と軌を一にした流れです。
日本国民の森を守るのでなく、金もうけのための森林経営です。
わしはぜったい、許さんけんね。どん!
というと、椎名誠みたいですが(^_^;)、そんなこと、ぜったい許せないのだ。
三俣山荘の経営者伊藤正一さんは、一人で闘っておられます。
私もぜひ応援したいと思います。
林野庁が、なぜ、そんなふうになってしまったのかについても、わかりやすく解説されている本です。
山歩きの好きな方、少しは山に恩返しがしたいと思っておられる方には、必ず手にとっていただきたい本です。
(ISBN4-947637-34-X C0036 P1545E 1995,6リベルタ出版刊 1997,6読了)