前著と比べて極論と思える記述が目立ちますが、説得力のある指摘も多い。
里山は日本人にとってもっとも身近な森林です。
関東地方では、コナラ・クリ・クヌギなどからなる落葉広葉樹林が典型的な里山です。
里山は、水田や畑といった日本の農山村の後背に広がっており、日本人の暮らしや文化の一部をなす風景です。
化石エネルギーや化学肥料の使用によって薪炭林・堆肥原料採取林としての役割を奪われて雑木林は放置林化し、スギ・ヒノキなどの人工林は外材の流入によって手入れのされない放置人工林化しつつあります。
この本では主に雑木林荒廃の背景と実態が、雑木林の生態の特徴を踏まえつつ指摘されています。
問題はその先で、どのようにして手入れの行き続いた雑木林を復活させるのかということです。
森林ボランティアは人数が少ないので無意味だそうです。
ここで提起されているのは、環境教育の場、森林療法の場、炭や材を生産して販売する場、生態系に配慮したゴルフ場などですが、わたしは、今ひとつ現実性に欠けると感じます。
しかしともかく、いろいろな試行錯誤を通して雑木林づくりに取り組むことは、なにもしないよりもはるかに前向きだと思います。
雑木林を遊園地化した秩父リゾートは、中核企業の西武の利益が上がらない上、所得隠しなどの反社会的行為によって指弾されるなど、これまた瀕死の状況ですが、日本の経済状況が好転すれば、息を吹き返す恐れもあります。
今のところ、雑木林を舞台にした起業などはちょっと無理だと思いますが、次の世代にはそれが可能であってほしいと思います。
(ISBN4-582-85133-9 C0261 \760E 2003,2 洋泉社新書 2005,8,17 読了)