食べ物におけるグローバル化の実態と問題点を調べた本。
取り上げられている食べ物は、ハンバーガー、牛丼、輸入野菜、ウナギ、そしてワカメです。
このうちハンバーガーと牛丼は、食材ではなく商品ですが、材料の調達はまさにグローバルに行われています。
そして共通するのは、そのいずれもが、いわゆる典型的なファストフードであるという点であり、安価であるとともに「ファスト」であることに価値を付加している商品だと言えます。
これらの食べ物が売れる背景には、食べるとは満腹感とカロリーを得ること以上のものではないという、文化的でない食べもの観が根底にあり、食事を楽しむ余裕のないビジネスマン(わたしも似たようなものですが)やものぐさ指向の人間が多くなってしまった現実がそうさせているのだろうと思います。
食べ物の嗜好は強制できませんので、まぁ誰も好きにすればいいのですが、子どもたちをファストフード漬けにするのはよくないと思います。
野菜その他の輸入食材の問題の方が、もう少し深刻です。
わたしは、山に登ったときでもなければ、インスタントやレトルト食品を食べないのですが、スーパーで売っている食材を買わないで暮らすのは無理だからです。
第一次産品の自由化によって、安価な食材が流入することによって、国内の生産者は深刻な打撃をこうむり、国内産業は空洞化していきます。
日本マクドナルドの社長は「農民も海外に出ていけばいいのだ」と言っているそうですが、国家のない世界であればともかく、食糧に関してもっとも重要なのは、安定して供給されることと安全であるということだと思っています。
安定供給というと、だから海外に産地を求めるのだといわれそうですが、「いつでもピーマンが食える」ことが必要なのではなく、夏〜秋にはピーマンが食えて、冬〜春には別の野菜が手に入ればいいのです。
海外産の食材が安定して入荷しているのは、日本が平和であり、経済力があり、世界にそれだけの供給力があるからであって、そのどれかが欠ければ、困ったことになるというのは、子どもにもわかる理屈でしょう。
国内産と比較して、海外産食材の安全性は、相対的に疑わしい場合が多いのが現実ですが、モノによっては、国内産より安全な場合もあるでしょう。
それを買うことによって、日本の消費者は、どういう経済構造に組み込まれることになるのか。
中国では日本向け野菜が大量に生産されています。
ほとんどの野菜は、日本産種子を使って日本の技術指導のもとに栽培される「開発輸入」という形態で栽培されていますので、安全性はともかく、品質的には国産品と全く変わらない水準のものが作られています。
2001年4月に、ネギのセーフガードが発動された際、日本向け輸出用のネギを作っていた農民10数人が、自殺したということが、本書に書かれている。
まるで秩父事件前の秩父ではないですか。
輸出用作物に偏った農業は、どこかで必ず破綻するように思います。
農産物は、狭い流通範囲で流通すべき商品なのです。
それによって、その農産物にまつわる文化が守られ、ひいては地域共同体が守られるのだと思います。
わたしの住む地域にも、定価100円の無人農産物販売所や農協の直売所があります。
こういう店には、地域独特の野菜など、楽しい商品もよく置いてあります。
農産物に関して言えば、買うならこのようなところで買いたいと思っています。
(ISBN4-906640-44-3 C0036 \1500E 2001,11 コモンズ刊 2005,1,7 読了)