きのこに関する博物学的な話題にあふれた本。
きのこは、人間にとってじつに不可思議な存在であったと思われます。
まず形や色が、何でもありだということ。
発生形態や大きさもしかりです。
きのこは何ゆえに発生するのか。
一見すると無から有を生ずるように見えますから、なおのこと理解に苦しみます。
いかに不可思議なものであっても、それが食せるものであるかどうか確かめてみたくなるのが人間であり、また何らかの薬効の有無をも探究するのも人間です。
きのこには、美味なるものと種々に有毒なものがありますから、有史以前らい、きのこによる数限りない悲喜劇が繰り返されて来ましたから、きのこの食と中毒に関する話題にはこと欠かないでしょう。
よく言われていることですが、ヨーロッパでは近代以来、きのこの学問的な研究が比較的進んでいたのに対して、日本では食毒や食べ方に関する雑多な知識を記した本はあったものの、きのこの存在意義に迫るような研究が本格化したのは、戦後も遅くになってからなのですね。
(ISBN4-89694-819-X C0045 \2000E 2003,9 八坂書房刊 2004,8,12読了)