『こんなものを食べていたのか』(青春出版社)とほぼ同内容の本です。
すなわち、「食」に関する現代日本人の考え方がいかにまちがっており、このままいくと人類に先がけて没落・滅亡するであろうという話が書かれています。
どんなに興味深い内容であっても、同じことを書いた本を読まされるのは、わたしとしては閉口です。
しかし30年来、著者が繰り返し「食」に関する警告を発してき、それが有効であったことはたしかです。
わたしは主に社会科学を学んできましたが、そこには著者のような生態学的な観点など、まったく存在していません。
歴史上のひとつのできごとが、どのような人々によって起こされたのかを知るには、その人々がどのようなものを食べていたのかを知る必要があります。
「食」は、人の暮らしをもっとも端的に語るキーだからです。
「食」を知るには、それらの食べものがどこからどのようにしてもたらされたのかということとともに、それらの食べものが生産される土壌や生態系をトータルに知る必要があります。
そこまでをおさえて初めて、そのできごとの必然性を解明することができるといえます。
こう考えると、社会科学はもっともっと深化されねばならないと思います。
深化というのは、個別的な事例や分野についての詳密な研究ではなく、逆に自然諸科学との総合化が求められていると思います。
さて、人類の諸活動によって、生態系と地球環境が破滅に向かってまっしぐらに進んでいるという著者の警告は、やはりきちんと受け止めるべきと思います。
とくに、近い未来を担う若い人々には、テレビというマインドコントロール装置に飼い慣らされていないで、自分の頭でものを考え、選択できるようになってもらいたいと思います。
ところで、現在が氷河期の入口であるがゆえに、温暖化と寒冷化が同時進行し、気候に乱れが生じているという説は初めて目にしましたが、たいへん説得力があると感じました。
(ISBN4-06-211563-8 C0095 P1500E 2002,11 講談社刊 2004,4,7読了)