日本の社会のなかで、戦争に対する感覚が次第に麻痺していくのを感じます。
『読売新聞』の社説をだいたい毎日読んでいるのですが、あそこに書かれているような意識を日本人があまり違和感なく受け入れているとすれば、
やはり数年後に、どのような形でか、日本は戦争をする国になっていくに違いないと思います。
パレスチナでは、イスラエルが最新兵器を使ってほとんど無抵抗のパレスチナ人を攻撃・殺害しているのに対し、正規戦では戦えないパレスチナ側が、自爆テロという形で、絶望的な戦いを続けているのですが、いまや戦いの目標は、「報復」のみに収束してしまった感があります。
自分自身が攻撃を受けることはおそらくないだろうイスラエルの兵士はともかく、パレスチナ抵抗勢力の兵士たちは、自分が命を散らすことがパレスチナの解放につながるという見通しもなく、自爆攻撃をくり返しています。
なんとむなしく、哀しいこと。
アメリカや北朝鮮や日本の政府高官の最近の発言を聞いていると、なんと幼稚な人びとに、強大な権力を与えてしまっているのかと、おぞましい思いになります。
戦うということの実態とか、兵士の本音なんかを、もっと知るには、この本がとてもよろしい。
かつて、『秩父事件を歩く』3部作(新人物往来社)という、地をはうような聞き書きを書かれた著者が、兵士・士官時代の内地と中国戦線での体験を、イラストをまじえて書かれています。
軍隊というのは、一種の別世界だったそうですが、著者らはすぐにその世界になじんでいったといいます。
著者は、軍隊にはいるまでのあいだに、しっかりと軍隊的教育を受けてきていたからそれが可能だったといっておられます。
教師に言われたらたとえ不条理でも従えというような教育は、するべきではありません。
(ISBN4-582-76305-7 C0321 \1100E 1999,9 平凡社ライブラリ 2003,8,20 読了)