今の日本において、人が、長く生きることによって、否応なく向かい合わなければならない現実とは、どのようなものかを描いた小説。
かつて老人といわれた年齢に達した人が、さらに長く生きた老親を介護しなければならない時代が訪れています。
こんな時代がやがて来ると、頭ではわかっていましたが、この小説のリアリティに、重い気分をぬぐえません。
来るべきものは、静かに、しなやかに受け止めたい。
今はそれだけしか、いえません。
おそらくは人生の半ばをすぎたわたしも、老いを迎える準備をすべきなのかもしれません。
わたしが思っている老いの準備とは、おカネとかではなくて、人間の生きざまや暮らしや、世界や宇宙に関する、さまざまに意味のある知恵を身につけること。
しなやかな感性や表現力をさらに磨くこと。
投げやりにならぬこと、人としての責任感を失わないことなどです。
それにしても、この国はいったい、どうなっていくのでしょう。
(ISBN4-10-146607-6 C0193 \552E 2000,10刊 新潮文庫 2002,8,10 読了)