サブタイトルには「森林遊学のすすめ」とあります。
そんな「遊学」が許されるなら、明日からでも出かけたいです。(^_^;)
『ブナの森を楽しむ』(岩波新書)で、西口先生のご本に出会って以来、4冊目ですが、いずれも楽しい本ばかりでした。
研究者の本というのは、論敵を意識して書かれることが多いので、専門家どうしの間でだけ通用するような論じ方や用語使いがされていることが多いと思います。
でも、西口先生の本にはそういう難解さがちっともなくて、われわれ一般市民にわかる語り口で書かれているところがうれしいです。
日本には、北海道から沖縄まで、さまざまな気候帯や地形があります。
この本は、全国それぞれの地域で、自然条件や社会的・歴史的にどのような林相が成立してきたかを、わかりやすく説いています。
北関東の低山には、ミズナラやリョウブ、奥武蔵ではコナラやクヌギが、美しい林を作っています。また、会津や東北に行くと、中くらいの山でブナ林、標高の高いところではアオモリトドマツがすばらしい原生林を作っています。
この本を読むと、それら目に慣れた森林が、読めてくるのです。
うれしいですね。
リョウブはやせた土地に生える木。ミヤコザサが豊富なら、シカはリョウブを食べなくてもいいはず。
そんなことが書いてありました。
それでは、足尾に見られる、シカによるリョウブの食害はどう考えるべきなのでしょう。
夏に秩父の沢でよく見かけるナツツバキは、三陸が北限とあります。
じつは今週末に、三陸の五葉山に出かけます。
このあたりにもナツツバキがあるでしょうか。
木は、生き物ですから、いろんなことを考えながら、生きているのです。
木を「もの」として考える悪いくせは、なおしましょう。
このところ、あちこちで出会った、印象深い木たちのことを思い出します。
南会津・小野岳のあのシナノキ。
谷川・三国峠近くの、あのカツラ。
南会津・七ヶ岳のあのイチイ。
こういうことを考えていると、山歩きや渓流釣りがいちだんと楽しくなります。
尾瀬について、西口先生が、結果的に私とほとんど同じように考えておられたので、うれしかったです。
(ISBN4-89694-679-0 C0045 P2200E 1996,4 八坂書房刊 1997,5,20読了)