佐和山で、モンキアゲハが忙しく飛ぶ。
(おれ) みつなりさん。
(みつなり) おう、よくおわかりになられた。
(おれ) たしか京都のどこかでお休みではなかったんですか。
(みつなり) 蝶の姿になってな、あちこち飛び回っておるのよ。
(おれ) ここは景色がいいですね。
(みつなり) ああ、琵琶湖の手前に見えるのが信長さまのおられた安土の城じゃ。伊吹山の右が関ヶ原よ、ははは。
(おれ) さぞ悔しいでしょう。
(みつなり) 馬鹿をいうな。そちらの世とこちらの世は別世界じゃ。さすがに家康どのには含むところがなくもないが、道で会うたら挨拶くらいはいたす。哀れなのは秀秋よ。400年たつというのに、許してくだされというて、未だに泣き暮らしておる。いくさに負けたのは残念だが、致し方なかろう。それよりわしは、あのいくさで刑部どのという無二の友人を得た。思い出話が楽しいわい。
(おれ) コーヒー飲みます ?
(みつなり) そんな泥水みたいなものを飲んで、腹でもこわしたらなんとする。わしは遠慮する。
(おれ) 相変わらず、食べ物に気を使われてるんですね。さすが。
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