花爛漫の稜線
−初夏の谷川岳−
【年月日】 |
2008年6月14〜15日 |
【同行者】 |
合計12名 |
【タイム】 |
6/14 土樽(10:53)−林道終点(11:35-12:00)−東俣沢出合(12:45)
−蓬峠(14:55)
6/15 蓬峠(4:50)−武能岳(5:35)−茂倉岳(8:00)
−一ノ倉岳(8:33)−オキの耳(9:40)−肩の小屋(10:15-10:55)
−熊穴沢小屋(11:50)−天神平(12:35)
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【地形図】 |
土樽、茂倉岳、水上 ルート地図
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ラショウモンカズラ
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オオバミゾホオズキ
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一日目
3年ぶりの谷川岳だが、ルートは前回と全く同じだった。 梅雨の初期ではあるが、好天はあまり期待できない。
とはいえ、南アルプスなどと比較すれば、悪天に遭遇する確率は低いかも知れない。
関東地方は梅雨の中休みとなり、まずまず晴天だったが、トンネルを出ると山にはガスがかかり、霧雨模様だった。
列車が土樽駅を通過するという情報を事前に知らなかったため、しばらくとまどったが、越後中里から代行バスが出るとのことだったので、まずは安心した。
土樽駅への到着は少々遅くなったが、相変わらず霧雨程度だったので、合羽なしで出発。
ニセアカシア・ミズキ・キリ・タニウツギなどの花がさかんに咲いていた。
ここの車道歩きの途次に咲く樹木の花で最も印象的なのは、サワグルミだった。
目立たない花だが、蓬沢の渓畔で、直立した幹に格好よく広げた枝から、無数の穂花をぶら下げていた。
スギ林に入ると、金属的なヤブサメのさえずりが聞こえた。
林道終点には、真新しい砂防堰堤ができていた。
登山道には、転倒したブナが道をふさいだところもあり、部分的に道のわかりにくいところもあった。
登山道に入ると、ラショウモンカズラやオオバミゾホオズキ・キヌタソウ・サンカヨウ・エンレイソウ・タチツボスミレ・ツクバネソウ・ノリウツギ・ホウチャクソウ・アカネスミレ・カラマツソウなどがさかんに咲いていた。
東俣沢出合を過ぎると、ちょうどよい案配のシオデが、たくさん出ていた。
若ブナの多い尾根にとりつくと、ザックの重さに足が上がらず、みんなから少し遅れてしまったが、若者たちが元気なのは頼もしい。
イワカガミやギンリョウソウ・ツバメオモト・アカモノなどを見ながら中の休み場で小休止。
シライトソウも多いが、まだようやく、花茎を伸ばし始めたばかりだった。
ここには、ムラサキヤシオ・ウワミズザクラ・タムシバ・ユズリハ・ミヤマシキミ・クロモジなどが咲いていたので、樹木の勉強ができた。
ムラサキヤシオ鮮やか
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シラネアオイも多い
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ジグザグの苦しい登りを頑張ると、トラバース道になる。タムシバやオオカメノキ・ムラサキヤシオがますます多くなって、山には雪渓が見えて、周囲は新緑の景観となる。
オオルリ・クロジ・ジュウイチなどのさえずりも賑やかだ。
渡らなければならない2ヶ所の雪渓のうち、最初の雪渓はストックを使って何なく横断。
2つ目はネマガリタケのヤブに入って高巻いた上で横断した。
このあたりでは、雪解けあとにフキノトウが出たばかりで、いかにも豪雪地帯らしい。
キヌガサソウがひと株、立派な花を咲かせていた。
このあたりのヤブで山菜を探す知り合いの沢屋さんに出会った。
ナエバキスミレやシラネアオイ・ミヤマカタバミなどを見ながらすぐに蓬峠直下の水場。
ここまで来れば、テント場は一投足だ。
新潟側がガスっており、冷たい風も吹いていたが、郡県側はよく晴れていて、天候としては上々だった。
この日はこちらのパーティだけで3張。
他にも数パーティが幕営していたので、イワカガミやミツバオウレン・タテヤマリンドウなどの咲く蓬峠のテント場は、期せずしてテント村のように賑やかになった。
この中で社会人パーティは1張だけだったが、かなり迷惑に感じたのではなかろうか。
テント場では蛙が鳴き、樹林帯からは遠く、ホトトギスの鳴く声が聞こえていた。
宵のうち吹いていた風は夜半にはやみ、外に出てみると満天の星空だった。
梅雨に中休みとはいえ、重ねがさねラッキーだったと思う。
蓬ヒュッテ玄関の温度計は1度をさしており、夜中は多少寒さを感じたが、動き出してみれば、ほどよい気温だった。
ヒュッテのトイレが混雑していたのは、この日の宿泊者数を考えればやむを得ない。
食事の片づけを終えたころに、ご来光。
快晴だったので、もののみごとな日の出を見ることができた。
白毛門・笠ヶ岳・朝日岳・ジャンクションピーク・七ツ小屋山はシルエット。
苗場山や白砂山周辺の彼方には、北アルプスだと思われる真っ白な連山が見える。
これから向かう武能岳・茂倉岳・谷川本峰もくっきり見えていた。
すっかり明るくなった5時前に出発。
武能岳まではさほどでないが、茂倉岳の登りにかかると、初夏の花々がすばらしい。
日が昇るとカッコウやウグイスのさえずりがいい感じだった。
カラマツソウ・ニッコウキスゲ・ギボウシなどはまだつぼみだったが、ナエバキスミレ・オゼソウ・ホソバヒナウスユキソウ・ジョウシュウアズマギクなどの固有種がそこここに咲いているかと思えば、ユキワリソウやシラネアオイの群落がいっせいに開花したところもあり、ハクサンチドリ・ツマトリソウ・ハクサンイチゲ・ヨツバシオガマ・ツガザクラ・ムシトリスミレなども見られた。
ハクサンコザクラらしい花は1株しか見なかった。
茂倉岳への急登を登りきると、大展望が待っている。
3年前にはガスで何も見えなかったのだが、今回は文句なしの見晴らしだ。
日光・足尾方面や巻機山・中ノ岳・八海山あたりもよく見えていた。
大源太山の鋭峰が印象的だ。
一ノ倉岳との鞍部雪田はずいぶん小さく、軽アイゼンを出すまでもなし。
シャクナゲの一ノ倉岳を超えると、本峰はすぐ目の前だが、ここはいったん急降下して登り返さなければならない。
東側が岩壁で西側はシャクナゲやオオカメノキの密ヤブ。
ミネザクラも咲いていて、時ならぬ花見もできた。
ヤブを切り開いてつけられている道が尾根に出ると、シラネアオイやイワイチョウが咲いている。
一ノ倉沢上部を懸垂下降している人たちに注意しながらオキの耳への登り。
このあたりのシャクナゲは盛りは過ぎたものの、まだ十分に美しかった。
足元には、ミヤマキンバイが点々と咲く。
トマの耳で集合写真を撮って肩の小屋で大休止。
仙ノ倉山への稜線がダイナミックにうねっていてすばらしい。
いつか行ってみたい道だ。
シャクナゲの海
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なごりのカタクリ
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小屋前で軽アイゼンをつけたが、肩の小屋下の雪田は腐っていて、爪がほとんど効かない。
それでも、初心者には練習になっただろう。
ここから熊穴沢避難小屋までは整備の行き届いた広い道だが、急な下りだ。
荷物が重いので、ここはかなり慎重に下った方がよい。
樹林帯が近づくと、エゾハルゼミがギイギイとがなり立てる声が賑やかだ。
ベニサラサドウダンがびっしりと花をつけているのも、とてもみごとだ。
晴れていただけに、樹林帯に入って直射日光から解放されると、ほっとする。
再び、コルリやクロジのさえずりに包まれて、ゆっくり下る。
トラバース道に入って田尻尾根道を分け、ミヤマハタザオ・イワカガミ・イワナシ・イワウチワ・キクザキイチゲ・名残のカタクリなどを見ながら、天神平まではすぐだった。
新しくなった土合口の観光施設発のバスに間に合ったので、帰りが早くなった。
おかげでこの日も、ジャガイモ掘りがはかどった。
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