- 梅雨の谷川岳 -
一日目
関東甲信越が梅雨入りした翌日の谷川岳。
水上あたりは雨だったが、土樽駅を出ると、曇り案配ながら、雨は降っていなかった。
3週間前にはべったりと残雪に覆われていた谷川連峰も、沢筋に雪渓を残してはいたものの、夏の訪れを感じさせるたたずまいだった。
駅周辺では、エゾハルゼミがけたたましい鳴き音を立てており、初夏の季節感をひきたてていた。
渓にはまだ、雪代が入っており、ササ濁りの渓はいくらか増水気味だった。
サワグルミ、ハクウンボク、サワシバ、トチ、ホオなどが沢沿いの道路の両側であまり目立たない花を咲かせていた。
上級生がパーティを引っ張るので、歩き出しからものすごい速さだった。
登山道に入ると、春から初夏に咲く花がそこここに見られて、気分がよい。
東俣沢出合からは、沢を離れて山腹のトラバース。
足元をイワカガミ、イワウチワ、アカモノ、イワナシ、ツバメオモト、ツクバネソウなどが彩り、タムシバ、ムラサキヤシオ、オオカメノキ、ハウチワカエデなど、樹木の花もにぎやかだ。
高度を上げると、小さな雪渓をいくつも渡る。
雪解けあとにはフキノトウが顔を出したかと思えば、オオバキスミレ、ショウジョウバカマなどが咲いており、季節が逆戻りしたような感じ。
森林限界を過ぎると、茶入沢の雪渓。
コマドリやメボソムシクイのさえずりが聞こえてくると、シロバナノヘビイチゴ、キクザキイチゲ、シラネアオイ、マイヅルソウなどが咲く、蓬峠直下。
小屋の水場あたりで小雨になり、蓬ヒュッテに着くと、雨まじりの強風が群馬県側から吹きまくっていた。
その後風は、多少おとなしくなったものの、翌朝まで吹き続けた。
二日目
翌日は、小雨とガスの中、出発。
残念ながら展望は皆無だが、足元の花は相変わらずはなやかで、ミツバオウレン、イワカガミ、シラネアオイ、ツマトリソウなどが咲いていた。 ニッコウキスゲはやっと、花茎を伸ばし始めたばかりだ。
アズマシャクナゲのピンクがガスの中に浮かんでいるようすも、風情がよい。
武能岳を越えると、ホソバヒナウスユキソウ、オゼソウが咲いていた。
茂倉岳への急登では、ユキワリソウの群生も。
あとしばらくたてばハクサンコザクラの大群落となる、一ノ倉岳と茂倉岳の鞍部の雪田では軽アイゼンを装着したが、雪が腐っていたので、あまり効かなかった。 ハクサンコザクラは、やっと咲き始めたところだった。
露岩の多い谷川本峰への道では、至るところにアズマシャクナゲが咲いており、ハクサンシャクナゲも、ちらほら見えていた。 この日は登山者をほとんど見かけなかったが、オキの耳まで来ると、一般のハイカーもたくさん登ってきていて、高校生パーティを珍しげに見ていた。
肩の小屋まで下るとガスはすっかり晴れ、南〜東側が一気に開けた。 天神尾根も花が多かったが、下るにつれて蒸し暑くなった。 ロープウェーを降りると、下界はまたセミ時雨に包まれていた。
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