シラネアオイ揺れる
- 梅雨の谷川岳 -

【年月日】

2005年6月11〜12日
【同行者】 合計10名
【タイム】

6/11 土樽(10:43)−林道終点(11:28)−東俣沢出合(12:15)
   −蓬峠(14:40)
6/12 蓬峠(5:00)−武能岳(12:55)−茂倉岳(7:43)
   −一ノ倉岳(8:33)−オキの耳(9:40)−肩の小屋(10:20)
   −熊穴沢小屋(12:02)−天神平(12:50)

【地形図】 土樽、茂倉岳、水上 ルート地図
【関連ページ】 梅雨の谷川岳

ガスの中に浮かぶハクサンイチゲ
天神尾根のムラサキヤシオ

一日目

 関東甲信越が梅雨入りした翌日の谷川岳。

 水上あたりは雨だったが、土樽駅を出ると、曇り案配ながら、雨は降っていなかった。
 それどころか、万太郎谷上部でさえ、ガスがかかっていなかったので、上々のスタートといえた。

 3週間前にはべったりと残雪に覆われていた谷川連峰も、沢筋に雪渓を残してはいたものの、夏の訪れを感じさせるたたずまいだった。

 駅周辺では、エゾハルゼミがけたたましい鳴き音を立てており、初夏の季節感をひきたてていた。

 渓にはまだ、雪代が入っており、ササ濁りの渓はいくらか増水気味だった。
 渓べりは、タニウツギの花にふちどられ、満開のニセアカシアが甘い香りを漂わせていた。

 サワグルミ、ハクウンボク、サワシバ、トチ、ホオなどが沢沿いの道路の両側であまり目立たない花を咲かせていた。

 上級生がパーティを引っ張るので、歩き出しからものすごい速さだった。
 小1時間で蓬沢の林道終点に着いたが、蒸し暑さも手伝って、こちらはややバテ気味だった。

 登山道に入ると、春から初夏に咲く花がそこここに見られて、気分がよい。
 ラショウモンカズラ、スミレサイシン、エンレイソウ、サンカヨウ、ミヤマカタバミ、オオバミゾホオズキなど。  ちょうど見ごろになったタムシバの白が、目に鮮やかだ。

 東俣沢出合からは、沢を離れて山腹のトラバース。
 ここからしばらくは若いブナの純林。
 いつか来たときには、きのこの多かったところだ。

 足元をイワカガミ、イワウチワ、アカモノ、イワナシ、ツバメオモト、ツクバネソウなどが彩り、タムシバ、ムラサキヤシオ、オオカメノキ、ハウチワカエデなど、樹木の花もにぎやかだ。
 ムラサキヤシオの濃赤紫が、残雪に映えてとても美しい。
 コシアブラもようやく葉を開いたところ。ヤマグルマはまだつぼみだった。

 高度を上げると、小さな雪渓をいくつも渡る。
 1年生にはちょうどよい、キックステップの練習になった。

 雪解けあとにはフキノトウが顔を出したかと思えば、オオバキスミレ、ショウジョウバカマなどが咲いており、季節が逆戻りしたような感じ。
 オオルリ、ミソサザイ、シジュウカラなどのさえずりもにぎやかだ。

 森林限界を過ぎると、茶入沢の雪渓。
 融雪が進んで、穴があき始めている。
 距離は短いが、ここは慎重に渡る。

 コマドリやメボソムシクイのさえずりが聞こえてくると、シロバナノヘビイチゴ、キクザキイチゲ、シラネアオイ、マイヅルソウなどが咲く、蓬峠直下。

 小屋の水場あたりで小雨になり、蓬ヒュッテに着くと、雨まじりの強風が群馬県側から吹きまくっていた。
 強風下での設営も、いい勉強になっただろう。

 その後風は、多少おとなしくなったものの、翌朝まで吹き続けた。
 夜半にかなり強い雨。
 しかし、明け方には気圧が上がり始めたので、天候は好転しつつあると思われた。

二日目

 翌日は、小雨とガスの中、出発。

 残念ながら展望は皆無だが、足元の花は相変わらずはなやかで、ミツバオウレン、イワカガミ、シラネアオイ、ツマトリソウなどが咲いていた。

ホソバヒナウスユキソウ
オゼソウ

 ニッコウキスゲはやっと、花茎を伸ばし始めたばかりだ。

 アズマシャクナゲのピンクがガスの中に浮かんでいるようすも、風情がよい。
 風の止み間に、ホトトギス、カッコウ、ウグイス、ルリビタキなどの声が聞こえてくる。

 武能岳を越えると、ホソバヒナウスユキソウ、オゼソウが咲いていた。
 いずれも、至仏山と谷川岳の固有種。
 ここで、これらの花に出会えたことが、とてもうれしい。

 茂倉岳への急登では、ユキワリソウの群生も。
 ハクサンコザクラより一回り小ぶりな、可憐なサクラソウだ。

 あとしばらくたてばハクサンコザクラの大群落となる、一ノ倉岳と茂倉岳の鞍部の雪田では軽アイゼンを装着したが、雪が腐っていたので、あまり効かなかった。

天神尾根上部から頂稜を望む
平標山への尾根が見えた

 ハクサンコザクラは、やっと咲き始めたところだった。

 露岩の多い谷川本峰への道では、至るところにアズマシャクナゲが咲いており、ハクサンシャクナゲも、ちらほら見えていた。
 ここまで来ると、時おりガスが切れて、万太郎山方面がのぞくようになった。

 この日は登山者をほとんど見かけなかったが、オキの耳まで来ると、一般のハイカーもたくさん登ってきていて、高校生パーティを珍しげに見ていた。

 肩の小屋まで下るとガスはすっかり晴れ、南〜東側が一気に開けた。
 赤城山、子持山、小野子山、嵩山、大峰山などが眼下に見え、武尊山、皇海山もよく見えていたが、日光方面までは目が届かなかった。

 天神尾根も花が多かったが、下るにつれて蒸し暑くなった。  ロープウェーを降りると、下界はまたセミ時雨に包まれていた。