駐車場に着いたのは8時半過ぎだった。
地形図を忘れてきてしまったので、だいたいの方角を見ながら「朝日の森」の方へ車道を行く。途中に何台も自動車が走ってきたが、なにかのイベントでもやっていたのだろうか。広場のなかに建物が建っているところで車道は終わり、山道になる。
あたりはすぐにブナの原生林になる。道はゆるやかに登っていく。ブナの立ち枯れの足元にミヤマガマズミが実っていたので、しばらくそれを摘む。やがて立ち枯れブナの高いところにブナハリタケが出ているのが見つかった。
尾根の上のT字路に出ると、「朝日の森」がたてた道標があり、そこが玉原越につながる尾根だということがわかる。いま登ってきた道は「タムシバルート」だ。左へ行くと尼ヶ禿山にいく「きのこルート」という道だと書いてあるのでここはそちらに入る。稜線では藤原の方から冷たい強風が吹きつけており、ブナの巨木が大きくゆれていた。
第5鉄塔で一息いれ、ふたたび原生林を行く。傾斜はほとんどなく、ブナ原生林のなかの散策といった風情だ。ナラタケやホコリタケ、ヌメリツバタケなどが少しずつ倒木に出ていた。尼ヶ禿山への分岐の直前でブナハリタケの生えた立ち枯れを見つけた。袋をもって根元に生えた木に登り、きのこを摘んだ。
ここを過ぎるとピークへの分岐だ。このあたりで雨が降りだした。尼ヶ禿山へはすぐだった。完全にガスってはいないのでいくらかまわりが見える。迦葉山につながる尾根は西側も含めてブナ林のまるい大きな樹冠のもりあがりが一面に広がっていた。山頂の周囲は刈り払いがされており、晴れていれば武尊や至仏が見えそうだ。雨と風をよける場所がないので早々に下山にかかる。
直下からは来た道を戻るのでなく、迦葉山方向に少し行ってみることにした。ブナのなかにときおりミズナラの巨木もまじっている。しかし絶対数はブナの方が圧倒的に多い。第6鉄塔の下の倒木でまたブナハリタケを見つけた。今度のはかさが開いていて少しかたそうだ。近くにはツキヨタケの出た倒木もある。秋のブナ林の雰囲気をじっくり味わえるところだ。
道はなおも迦葉山の方向へと続いているが左側の分岐に入る。今度は山腹をトラバースする道になり、「カモシカルート」を分けると小沢を渡って第5鉄塔に出た。そこでも倒木に新鮮なナラタケがたくさん出ていた。
第5鉄塔からは朝日の森に戻らず玉原越の方向に向かう。すこし下ったところのブナの巨木の上の方にブナハリタケらしいきのこが大群生していた。残念ながら登るのはまったく不可能で手が届かない。木の下には去年落ちたきのこがカサカサになって落ちている。そこからも下りぎみに行く。このあたりにはヒノキかネズコの大木がある。トチの木のある小沢を渡り、玉原トンネルの前の車道に出た。
トンネルのわきから再び尾根に登る道があるので登っていくと、突然すぐ横のササの中でなにかが動いた。一瞬クマかと思ったが人が二人出てきた。その人たちに聞くと、玉原越に行く道はこの尾根ではないということだったので、地図を持っていないこともあってこれ以上ブナ林を歩くのはあきらめ、車道を下ることにした。
駐車場で帰り支度をしているととなりに自動車をとめていた人が袋に巨大なきのこを入れて戻ってきた。きくとブナマイタケだという。おれがトンビマイタケではないかと重ねて聞くとやはりブナマイタケだと言った。