白井差口へのバスは予定よりやや早く着いた。
この時期にバスを降りると、いつもは震えあがるほど寒いのだが、この日の寒さはさほどでもなかった。
山中さん宅で入山手続きをしながら、記念バッジなどもいただき、車道の終点まで送っていただいた。
うららかに晴れて暖かい日だったが、さまざまな心づくしをいただいて、心も暖かくなって山道に入ることができた。
山に入ってすぐに、昇竜の滝を見る。
12メートルほどの直瀑だが、さすがに水量は少なかった。
その先しばらくで、道左に山ノ神の祠がある。
神様にも、入山の挨拶を兼ねて拝礼した。
沢沿いを行くのだが、概ね自然林が続く。
シオジやカツラの林だが、新緑の季節にはまた、格別な美しさだろうと想像された。
オオドリ河原の平坦地を過ぎて小尾根にとりつくと、傾斜がいくらかきつくなる。
まだいくらも歩いていないのに、今回は足がちっとも上がらず、このあたりで既に、かなり苦しかった。
ブナ平付近の若ブナ林

| ヤマザクラ大木

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周囲にはブナやミズナラなどの若木が多くなり、ブナ平が近くなったことを感じる。
このあたりから右上方に、頂稜に連なる大岩壁が見える。
灰色の岩と青空が好対照で、美しい。
ジグザグに登って行くと、ナツツバキの木のある平坦なブナ平に着き、小休止をとった。
ブナ平は小広く暖かな陽だまりで、冬山なのに、汗が吹き出すほどだった。
ブナ林を抜け大きなヤマザクラを見てジグザグになったあたりから、樹林越しに武甲山が見える。
林床にミヤコザサが密生した気持ちのよい斜面になると、尾根は近い。
尾根に出るとすでに山頂直下で、前回は得られなかった大展望の剣ヶ峰までは、すぐだった。
剣ヶ峰から八丁尾根

| 剣ヶ峰から赤岩尾根

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10月にここに着いたのは、日没が切迫した16時半近くだったのだが、今回は到着時刻はまだ12時半と、余裕はたっぷりだった。
展望もまずまずで、雲も多かったが、御座山や近景の山々、信越国境から志賀高原あたりにかけての雪山などが望まれた。
のんびりと大休止して、ゆるゆると下山にかかる。
前回ヘッドランプを点灯して下った鎖場も、日中はさほどの悪場でなく、スムーズに下ることができた。
小屋をのぞいたところ、登山者の姿が見えなかったので、今回もお世話になることにした。
清滝小屋近くの大カツラ(大きな写真)

| 落葉したシオジ林

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