冬の奥多摩
−三ツドッケ〜酉谷山〜熊倉山−

【年月日】

2010年12月18〜19日
【同行者】 全部で8人
【タイム】

12/18 東日原(10:08)−小休止(10:57-11:05)−小休止(12:00-12:10)
  −一杯水避難小屋(12:30)
12/19 一杯水避難小屋(6:15)−三ツドッケ(6:41-7:05)−
  矢岳分岐(8:29-8:38)−酉谷小屋(8:56)−酉谷山(9:18-9:26)
  −熊倉展望台(11:18-11:46)−熊倉山(12:17-12:25)−
  水場(13:30-13:40)−白久駅(14:45)

【地形図】 雲取山、三峰 武蔵日原 秩父 ルート地図

青梅駅にて
青梅駅にて

 好天予報がずばり当たって、八高線の車窓からは青空に白い富士山が映えていた。
 今回は、東飯能・拝島・青梅で乗り換えたのだが、青梅駅の立ち食い蕎麦屋がとても風情があるので、思わず写真に撮ってしまった。
 ホームの向かいにある観光案内所には、ひみつのアッコちゃんが大きく描いてあり、発車のメロディもアッコちゃんなのだった。

 奥多摩駅でものんびりして、東日原に着いたのは、10時過ぎと、2年前とほぼ同じ時刻だった。
 昨年の今ごろにも、ここから鷹ノ巣山に向かったのだが、そのときは時間が早かったとはいえ、周囲はまるで冷凍庫の中のように凍てついていた。

 この日は弱い冬型とはいえ、風もほとんどなく、小春日和の暖かいスタートになった。  バス停から少し戻ってコンクリ道に入り、すぐに細い山道に入る。
 この道の途中には、車道の通じていない人家が数軒あって、まだ現住者がおられるようだった。

 スギ林に入ると、ジグザグの急登で、身体が一気に温まる。
 鉱山わきを通って尾根に出たところが、きれいなミズナラの若木林。
 ここからすぐに滝入ノ峰の巻き道に入る。

ミズナラ若木の道
ミズナラとヤドリギ

 右(谷側)は植林で、左(山側)はミズナラ林。
 ミズナラ林は30〜40年生くらいだが、とても美しいところだ。

 倉沢への分岐を見落としたので、さらに少し登ったところで小休止。
 ミズナラにヤドリギがたくさんついていた。

 1388メートル峰は西から巻く。
 巻き道入り口の大きなミズナラには、見覚えがあった。

 やせ尾根に出ると、一杯水まで、ほんの少しだった。
 土間においてあった使えないストーブは撤去されて、土間が広くなっていた。
 時間が早いので、小屋に荷物を置いてから、水場の確認と薪集めに出かけた。

 水場は改修されて、ここの水場としては、今まで見た中で最もよく出ていたと思う。
 水を確保して薪を作り終わると、食事の支度をする時間になった。

 陽が西に回ったころ、2パーティ・5人の登山者がやってきた。
 これでこの夜の宿泊者は13人となり、就寝スペースは埋まった。
 夕暮れ前にもう1人の登山者がやってきたが、その人は小屋の中をのぞくこともせずに、三ツドッケへ登っていった。

 夕食は昨年のモツ鍋に引き続き、年の暮れらしく、すき焼きということになっていた。
 数年前まで、この若者グループでは、山に豆腐を持っていくことなど、考えもしなかった。
 昨年あたりから、ザックが多少重くなっても、ちゃんとしたものを山で食べようという雰囲気ができつつある。
 これはたいへん、喜ばしい。

 山で何を食べるかというところに、そのパーティの力の余裕が見えてくる。
 歩くのに精一杯だと、「何でもいいから軽くしたい」と考えるだろう。
 お湯をかけただけでできるインスタントご飯やフリーズドライのおかずなどのよい点は、軽いことだけで、下界だったらとても食べる気がしないほど、おいしくない。
 食べてしまえばザックは軽くなるのだから、体力さえあれば、食事には十分こだわったほうが、楽しい登山ができるというものだ。

ミズナラ大木
小屋前のブナ

 夕方前には食事も終わり、小屋前のブナの大木の向こうに、オレンジ色の夕日を背景にした、富士山のシルエットが浮かんできた。
 大展望が広がるわけではないが、切り絵のように美しい光景である。

 まだ十分青い空に大きな月が浮かび、東京方面には、明かりが灯り始める。
 食事の後片付けも終わり、あとは眠るだけだ。

小屋前から樹林越しの富士山
ご来光寸前(大きな写真)

 壊れた一斗缶を使って薪を燃やし、大人たちがしばし歓談している間に、若者たちは眠ってしまったようだった。
 昨年はテント泊だったので、寒くて眠れなかったが、今回は小屋泊まりのため暖かい夜を過ごすことできた。

 朝は4時半に起床。
 戸外は氷点下5度だったが、室内気温は1度だったので、水も凍らなかった。

 6時15分に出発すれば、ご来光数分前に三ツドッケに着ける目算だった。
 暗いうちは満天の星空だったが、三ツドッケに着いたときには、地平線付近には雲がかかっていて、富士山の全貌は見えていなかった。
 とはいえ、陽が昇ってくると、富士山も見えるようになり、展望としては、上出来となった。

 しばらく休んで、斜光線の中を酉谷山方面へ出発。
 原生林やカラマツ林の中を淡々と行く。

 酉谷山から先は登降がきびしいので、ここは水源巡視路を気楽に歩く。
 積雪もあるとはいえ、2年前よりずっと少ない。

 酉谷山に着く前に、修理の終わった酉谷小屋を見に行った。
 ここに泊まったのは12年前だが、小屋前の崖が蛇籠で補強してあった。
 幕営スペースがあるか確認したのだが、テントが張れそうなのは、2張り分程度だった。

 すぐに戻って酉谷山への明るい急登。
 一帯のスズタケが枯れつくしたので、このあたりもほんとに明るくなった。

三ツドッケから望む富士山(大きな写真)
酉谷山直下のカラマツ林

 酉谷山からの富士山の展望はいま一つだった。

 酉谷〜熊倉の尾根を歩くのは3度目だが、長くてきびしいロングコースなので、ここはなるべく体力を使わずに歩くのが、コツかもしれない。
 不鮮明な踏みあとを下って小黒に急登。小黒から急降下すると、この尾根唯一ほっとできる、なだらかな下り道となる。
 ここはスズタケが枯れつくしたので、何の不安もない道になった。

 大血川への分岐を分け、1452メートル峰への登りはさして苦しくないが、その次の1451メートル峰は、いつもながらたいへん苦しい登りだ。
 尾根がやせてき、岩が出てくると、熊倉展望台。
 ここでの大休止は、いいタイミングだった。
 かつてここから、錦秋の絶景を目にしたのだが、この日は展望はよいものの、山は冬枯れていた。

 展望台から熊倉山までは、岩場を交えた小さな登降が続くが、距離は短い。
 展望がめっきり悪くなった熊倉山には、日帰りの登山者も来ていた。

展望台から望む両神山
トチノキ林を下る

 もっとも苦しいのは、ここからの長い下りだ。
 おおむねトラバース気味に下っていくのだが、最初こそブナやイヌブナの大木のある、風情のある道だが、植林地に入ると、下草さえまったく生えていない急降下が延々と続く。
 倒壊寸前の造林小屋を過ぎて、トチの木の多い小沢を渡るところで小休止したときには、やれやれという感じだった。

 ここからも、新旧の植林地を急降下を交えて下っていく。
 新しい植林地からは、秩父市内や武甲山が見えてくる。
 最後は膝が痛くなりそうだったが、どうにか、車道に出たときにはほっとした。

 2年前よりややスピードが速かったが、無事に全員が歩ききることができてよかった。