青梅駅にて
| 青梅駅にて
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好天予報がずばり当たって、八高線の車窓からは青空に白い富士山が映えていた。
今回は、東飯能・拝島・青梅で乗り換えたのだが、青梅駅の立ち食い蕎麦屋がとても風情があるので、思わず写真に撮ってしまった。
ホームの向かいにある観光案内所には、ひみつのアッコちゃんが大きく描いてあり、発車のメロディもアッコちゃんなのだった。
奥多摩駅でものんびりして、東日原に着いたのは、10時過ぎと、2年前とほぼ同じ時刻だった。
昨年の今ごろにも、ここから鷹ノ巣山に向かったのだが、そのときは時間が早かったとはいえ、周囲はまるで冷凍庫の中のように凍てついていた。
この日は弱い冬型とはいえ、風もほとんどなく、小春日和の暖かいスタートになった。
バス停から少し戻ってコンクリ道に入り、すぐに細い山道に入る。
この道の途中には、車道の通じていない人家が数軒あって、まだ現住者がおられるようだった。
スギ林に入ると、ジグザグの急登で、身体が一気に温まる。
鉱山わきを通って尾根に出たところが、きれいなミズナラの若木林。
ここからすぐに滝入ノ峰の巻き道に入る。
ミズナラ若木の道
| ミズナラとヤドリギ
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右(谷側)は植林で、左(山側)はミズナラ林。
ミズナラ林は30〜40年生くらいだが、とても美しいところだ。
倉沢への分岐を見落としたので、さらに少し登ったところで小休止。
ミズナラにヤドリギがたくさんついていた。
1388メートル峰は西から巻く。
巻き道入り口の大きなミズナラには、見覚えがあった。
やせ尾根に出ると、一杯水まで、ほんの少しだった。
土間においてあった使えないストーブは撤去されて、土間が広くなっていた。
時間が早いので、小屋に荷物を置いてから、水場の確認と薪集めに出かけた。
水場は改修されて、ここの水場としては、今まで見た中で最もよく出ていたと思う。
水を確保して薪を作り終わると、食事の支度をする時間になった。
陽が西に回ったころ、2パーティ・5人の登山者がやってきた。
これでこの夜の宿泊者は13人となり、就寝スペースは埋まった。
夕暮れ前にもう1人の登山者がやってきたが、その人は小屋の中をのぞくこともせずに、三ツドッケへ登っていった。
夕食は昨年のモツ鍋に引き続き、年の暮れらしく、すき焼きということになっていた。
数年前まで、この若者グループでは、山に豆腐を持っていくことなど、考えもしなかった。
昨年あたりから、ザックが多少重くなっても、ちゃんとしたものを山で食べようという雰囲気ができつつある。
これはたいへん、喜ばしい。
山で何を食べるかというところに、そのパーティの力の余裕が見えてくる。
歩くのに精一杯だと、「何でもいいから軽くしたい」と考えるだろう。
お湯をかけただけでできるインスタントご飯やフリーズドライのおかずなどのよい点は、軽いことだけで、下界だったらとても食べる気がしないほど、おいしくない。 食べてしまえばザックは軽くなるのだから、体力さえあれば、食事には十分こだわったほうが、楽しい登山ができるというものだ。
ミズナラ大木
| 小屋前のブナ
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夕方前には食事も終わり、小屋前のブナの大木の向こうに、オレンジ色の夕日を背景にした、富士山のシルエットが浮かんできた。
大展望が広がるわけではないが、切り絵のように美しい光景である。
まだ十分青い空に大きな月が浮かび、東京方面には、明かりが灯り始める。
食事の後片付けも終わり、あとは眠るだけだ。
小屋前から樹林越しの富士山
| ご来光寸前(大きな写真)
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壊れた一斗缶を使って薪を燃やし、大人たちがしばし歓談している間に、若者たちは眠ってしまったようだった。
昨年はテント泊だったので、寒くて眠れなかったが、今回は小屋泊まりのため暖かい夜を過ごすことできた。
朝は4時半に起床。
戸外は氷点下5度だったが、室内気温は1度だったので、水も凍らなかった。
6時15分に出発すれば、ご来光数分前に三ツドッケに着ける目算だった。
暗いうちは満天の星空だったが、三ツドッケに着いたときには、地平線付近には雲がかかっていて、富士山の全貌は見えていなかった。
とはいえ、陽が昇ってくると、富士山も見えるようになり、展望としては、上出来となった。
しばらく休んで、斜光線の中を酉谷山方面へ出発。
原生林やカラマツ林の中を淡々と行く。
酉谷山から先は登降がきびしいので、ここは水源巡視路を気楽に歩く。
積雪もあるとはいえ、2年前よりずっと少ない。
酉谷山に着く前に、修理の終わった酉谷小屋を見に行った。
ここに泊まったのは12年前だが、小屋前の崖が蛇籠で補強してあった。
幕営スペースがあるか確認したのだが、テントが張れそうなのは、2張り分程度だった。
すぐに戻って酉谷山への明るい急登。
一帯のスズタケが枯れつくしたので、このあたりもほんとに明るくなった。
三ツドッケから望む富士山(大きな写真)
| 酉谷山直下のカラマツ林
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酉谷山からの富士山の展望はいま一つだった。
酉谷〜熊倉の尾根を歩くのは3度目だが、長くてきびしいロングコースなので、ここはなるべく体力を使わずに歩くのが、コツかもしれない。
不鮮明な踏みあとを下って小黒に急登。小黒から急降下すると、この尾根唯一ほっとできる、なだらかな下り道となる。
ここはスズタケが枯れつくしたので、何の不安もない道になった。
大血川への分岐を分け、1452メートル峰への登りはさして苦しくないが、その次の1451メートル峰は、いつもながらたいへん苦しい登りだ。
尾根がやせてき、岩が出てくると、熊倉展望台。
ここでの大休止は、いいタイミングだった。
かつてここから、錦秋の絶景を目にしたのだが、この日は展望はよいものの、山は冬枯れていた。
展望台から熊倉山までは、岩場を交えた小さな登降が続くが、距離は短い。
展望がめっきり悪くなった熊倉山には、日帰りの登山者も来ていた。
展望台から望む両神山
| トチノキ林を下る
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もっとも苦しいのは、ここからの長い下りだ。
おおむねトラバース気味に下っていくのだが、最初こそブナやイヌブナの大木のある、風情のある道だが、植林地に入ると、下草さえまったく生えていない急降下が延々と続く。
倒壊寸前の造林小屋を過ぎて、トチの木の多い小沢を渡るところで小休止したときには、やれやれという感じだった。
ここからも、新旧の植林地を急降下を交えて下っていく。
新しい植林地からは、秩父市内や武甲山が見えてくる。
最後は膝が痛くなりそうだったが、どうにか、車道に出たときにはほっとした。
2年前よりややスピードが速かったが、無事に全員が歩ききることができてよかった。
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