晩秋の奥多摩
−三ツドッケ〜酉谷山〜熊倉山−

【年月日】

2008年10月25〜26日
【同行者】 全部で6人
【タイム】

10/25 東日原(10:04)−一杯水避難小屋(12:35)
10/26 一杯水避難小屋(6:00)−三ツドッケ(6:25-6:41)−
  矢岳分岐(8:14-8:24)−酉谷山(9:00-9:16)−熊倉展望台
  (11:36-12:00)−熊倉山(12:30-12:40)−白久駅(14:50)

【地形図】 雲取山、三峰 武蔵日原 秩父 ルート地図

ミズナラ大木の道
ブナの道

 車窓の外は曇り案配ながら、天気はもちそうだったのだが、奥多摩駅手前のトンネルを抜けたとたん、人家の屋根が濡れているのがわかった。
 想定外の雨だったが、駅を下りてみると、山行にはほとんど影響しない弱い霧雨だった。

 東日原に向かう西東京バスは、車内放送でちょっとしたバスガイドをやってくれる。
 倉沢から日原への長いトンネルでは、過去の地滑りによって発生した大災害のことを話してくれて、歴史の勉強ができた。

 郵便局の先からコンクリ道に入り、人家の間を縫って登っていく。
 日原は、秩父でいえば栃本のような急傾斜地に立地する村だ。
 獣害よけのネットが張られた中で、秋野菜が育っているが、荒れた畑も多い。

 集落を抜けるとスギ林の登り。
 きついジグザグ登りなので、汗が噴き出す。

 アカマツの大木を見ると鉱山のフェンスわきを通って、尾根に上がる。
 ミズナラが多くて、いい森だ。

 滝入ノ峰の巻道に入ると、傾斜がゆるんでらくになる。
 谷側がスギで山側はミズナラの美林だ。

 再び尾根に出たあたりは、ミズナラの巨木林でブナの大木も散見された。
 倉沢からの道を合わせたところで小休止。

小屋前のウリハダカエデ
シイタケとクリタケ

 ここからは傾斜もさほどでなく、ミズナラ巨木を堪能しながらのんびり登っていく。
 ブナが多くないので、ナメコやムキタケは見つからなかったが、クリタケやシイタケが出ていたので、今夜のおかずに摘んでいった。

 ガスの舞う避難小屋に着いたのはお昼過ぎ。
 まだ早いので、先客はなし。
 銀マットを敷いて、6人分の就寝スペースを確保し、まずは水くみに行く。

 前回ここで泊まった冬には完全に枯れていた一杯水は、細いながらもとぎれることなく出ていたので、助かった。
 それでも炊事用と翌日の行動用の水を汲むのに、30分近くはかかったと思う。

 その後、みんなで薪集め。
 ストーブ内部を掃除してから点火したが、煙突がひどく詰まっているらしく、本体から煙が出てきて、小屋の中が煙だらけになった。
 気温も高かったので、ストーブはその後使わずじまいだった。

 見たところ、家の煙突と構造はほぼ同じだったので、ワイヤ付きの煙突ブラシがあれば、分解掃除できそうだった。
 しかし、煙突掃除も管理者が行わねばならないとすると、なかなか手間のかかることだ。

 夕方、単独のハイカーが入ってきたので、小屋を独占というわけにはいかなくなった。
 静かな山を楽しみたい方にとって、高校生はうるさかったかも知れないが、前回、小屋前で幕営していた大学生の喧しさに比べれば、はるかにましだったのは事実である。
 陽が落ちて、5時過ぎにはみんな眠ってしまったのではなかろうか。

落ち葉の道
ヌメリスギタケ(大きな写真)

 翌朝は5時に起きて、6時に出発。
 まずは三ツドッケをめざす。

 小屋わきから急な道を登っていき、二つ目のピークが三角点峰だ。
 南側が広くなっていて、石尾根や奥多摩の山並みが一望できる。
 はるか向こうには、富士山も薄く見えていた。

 第3ピークあたりはブナ林。
 立派な樹が並んでいて、雰囲気がよい。

 水源林道に出てからはほぼ、尾根の南側を巻いていく。
 七跳山には登らずにパス。

 坊主山先の鞍部が矢岳への分岐。
 矢岳への道は木の枝で柵してあり、「この先登山道消滅。引き返す勇気を持て」などと記してあった。
 このルートは今まで2度歩いているが、いよいよ道が消えたのだろうか。

 やがて左前方に酉谷避難小屋が見えて来るとまもなく、尾根への急登で、尾根上のブナ林を登っていくと、しばらくぶりの酉谷山に着いた。

 酉谷山南面の伐開は、東京都の山がよく見えるようにということなのだろうが、ヤブに埋もれていた山頂の方が雰囲気はずっと良かった。
 ともかく、ここからは大岳山、御前山、石尾根、富士山、丹沢などがよく見えており、樹林越しに雲取山、芋の木ドッケ、白岩山なども望むことができた。

酉谷山から望む富士山
坊主山(左)、小黒(中)、酉谷山(右)

 酉谷山から熊倉山への尾根は、うって変わって細い踏みあとを行く。
 小黒へは苔むした倒木の中を下り、急登する。
 小黒から熊倉尾根へは、北へのゆるやかな尾根に引き込まれやすいが、ここは西へ急降下しなければならない。
 ここで久しぶりにルートミスをした。

 枯れたスズタケの中をしばしで、大血川分岐。
 どんどんとばして、1452メートルピーク先で小休止。
 埼玉側の尾根も紅葉がきれいだが、緑色の葉っぱもまだ残っていた。

 1451メートルピークへの登りは、ここまでの縦走の疲れもあって、かなり苦しい。
 その先、地形図上は穏やかだが、実際には岩峰の急な登降があるので、体力をけっこう消耗する。
 樹間から秩父市内が見えるが、先はまだ長い。

 熊倉山南東ピークの肩が、熊倉展望台(仮称)だ。
 18年前にもここで絶景を楽しんだのだった。
 ちょうどお昼前でもあったので、迷わずここで大休止。

 背後に坊主山・小黒・酉谷山が3つ並ぶ。
 東谷を囲む山稜は長沢背稜。
 最高点は芋ノ木ドッケなので、ここから雲取山は見えない。

 芋ノ木ドッケから白岩山とたどると、目の前は霧藻ヶ峰。
 縦横に走る林道が、よく見える。
 この夏あの林道で毎日、一緒にザックの積み下ろしをした同僚が感慨深げに、眺めていた。

 妙法ヶ岳の向こうに甲武信三山。
 そのはるか彼方にも高い山が見えるが、金峰山あたりだろうか。
 両神山も無傷でよく見えていた。

 眼下の東谷は紅葉真っ盛りで、会津などに比べればはるかに小規模だとはいえ、美しい紅葉が見られた。

 熊倉山まで来ると、ハイカーの姿も見えて、ずいぶん里近くまで来た実感がわく。
 山頂手前に、寺沢コースは工事中で通行止めのため、城山コースか林道コースを通るようにという表示があったので、少し話し合ったのち、城山コースより林道コースの方が穏やかだろうと考え、林道コースを下山することにした。

 林道コースは、熊倉山北西の2つのピークを巻き、急降下とトラバースを繰り返しながら白久に向かう。
 ここの下りにはイヌブナがすこぶる多い。
 奥多摩側ではほとんど見なかったイヌブナが秩父側に多いのは、日照の関係だろうか。

東谷の紅葉(大きな写真)
トチノキ林を下る

 トラバースはともかく、ロングコースを登降してきただけに、急降下はかなりこたえた。
 立派に手の入ったスギ林を一気に下ると、崩壊寸前の営林署小屋。
 見晴らしは悪いが、ここで小休止して、疲れを癒す。
 里山とはいえ、熊倉山から登山口までの標高差は1000メートル近いから、あまりどんどん下ると足を痛めそうだ。

 小沢を渡ってしばらく行くと県造林で、植えたヒノキ苗に、食害防止のビニールネットをかぶせたはいいが、その後の世話をしないため、枯れたり蒸れたりしていて、かわいそうだった。

 再び急降下するところは、トチの壮年林。
 トチの落ち葉が斜面を埋めた様子は、なかなかのものだった。

 ルート自体は二万五千図とずいぶん違っているが、谷津川べりの登山口は地形図通りだった。
 かつてずいぶん賑わっていた白久駅前の旧スケート場が広い荒れ地と化しており、草だらけになっていたのもまた、時の流れを感じさせた。