渓は増水気味
| 苔光る
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天気図的にはさほど悪くなかったのだが、朝から曇りあんばいの天気だった。
作場平まで、順調にアプローチでき、問題なく沢沿いの登山道に入った。
曇ってはいたが、いくらか陽も射しており、まずまず好天の山行きだった。
渓はやや増水気味で、それなりにいい感じだった。
二つ目の一休坂分岐で小休止。
さすがに盛夏に比べて多少涼しく、汗もあまりかかずに来た。
ヤブ沢峠へはさほど急登でなく、なんなく稜線へ。
笠取小屋へは平坦な道なので、休まず行った。
笠取小屋周辺には、盛りを過ぎたマルバダケブキの黄色だらけだった。
小屋は留守だった。
トイレの前の涼しそうなところに設営し始めたとき、何者かの視線を感じて林に目をやると、数頭の鹿がこちらを見つめているのだった。
われわれが写真を撮るために少し近づいてもあまり恐れる様子はなく、悠然として口をもぐもぐさせているのだった。
お昼から空身で笠取山へ出かけた。
天気はまだ悪くなく、草原にはマルバダケブキ以外にハナイカリがポツポツ咲いていた。
伐採時の遺物を見ると、笠取山への急登になる。
標高差はたいしたこともないのだが、なにせ急なので、息が切れる。
笠取山からの展望は、残念ながら雁峠周辺以外には得られなかった。
それでも、広く開けた空間は気分がよく、他に登山者がいないのもありがたかった。
少し休んで、ミズヒに向かう。
尾根を少し東へ行き、道標に従って右へ下る。
トラバース道を戻り気味に西へ行くとミズヒだった。
ダイモンジソウとヤマトリカブトの咲く岩の割れ目から水は出ていなかったが、すぐ下から流水の音が聞こえた。
テントに戻って昼寝をしていると、ガヤガヤという話し声とともに、10人くらいの一行がやってき、目が覚めた。
夜半に雨音がテントを叩いた。
天気図はさほど悪くなかったのだが、やや残念だった。
とはいえ、外に出てみると、実際には霧雨同様で、さほど降っているわけではなかった。
朝の炊事と撤収までほぼ降っていなかったのは、結果的には助かった。
雁峠へ向かうと、ガス・小雨・南風で状況的にはあまり楽しくない。
燕山へはけっこう長い急登となる。
晴れていれば、苦しさもずいぶん和らいだろう。
燕山巻き道手前で小休止したが、風が冷たくて寒かった。
その先、古礼山まではササ原と立ち枯れの続く尾根歩きである。
今回のコースでもっとも気持ちがよいのはここなのだが、この日は何も見えず、強い風が吹きつけてくるだけだった。
古礼山巻き道の風のこないところで、小休止。
晴れていれば文句なしに尾根道だから、古礼山を巻いたのは初めてだった。
展望はないが、ここは苔が埋め尽くした林床が、得も言われず美しいところだった。
樹林の水晶山をスルーするとしばらくで雁坂小屋近道の分岐。
ここはショートカットせず、さらに尾根を行く。
雁坂峠で晴れるわけもなく、集合写真だけさっと撮って、雁坂小屋へ。
雨はほとんど降っていなかったので、尾根の北側に逃げればのんびり下れるかと思ったのだが、雁坂小屋前で休んでいたら、雨が強くなってきた。
ここを下るのは六度目だったので、知った道なのだが、直近に通った3年前と比べて、道の崩壊箇所が増えたような気がした。
今までは雁坂峠から樺小屋までワンピッチだったが、今回は地蔵岩分岐まででちょうどワンピッチだった。
ダルマ坂から本格的な下りになり、樺小屋はスルーして突出峠で小休止。
風も感じなくなり、荷物はもちろん軽くなっているので、ゆるい下りは快調そのものになりそうだが、そんなにひどく疲れるようなところはなかったはずなのに、足が上がらなかった。
水の元手前の急坂下りあたりで、下りに飽き飽きしてしまった。
ともあれ、その先もどんどん下って無事、みんな元気に川又へ到着した。
川又でバスを待つ1時間ほどの間、トイレの入口で眠っていた。
バスに乗ると今度は、三峰口で起こしてもらうまでずっと眠っていた。
そういえば今回は夜中にトイレにも起きず、起床時刻まで眠っていた。
よく眠り、よく歩いた登山だった。
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