久殿沢の流れ
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ここを歩くのは何度目か、ちょっと覚えていないが、ずいぶん久しぶりだということは、確かだった。
ナメ沢近くのスペースを軽トラをとめ、樹木園の駐車場から森に入る。
照り返しのひどい車道から少し入っただけで、嘘のように涼しくなった。
以前にはなかった鹿よけネットをくぐって樹木園に入る。
ブナの多い斜面をジグザグに下っていくと、滝川の渓音が、なつかしい。
土捨て場あとに降り立つと、砂防工事の施された斜面には、カエデが植えられていた。
ここは、トンネル工事で出た土砂を投棄した場所だった。
1997年には、捨てられた土砂が滝川まで落ちていたものだが、土木事務所に電話で文句を言ったら、すぐに土留工事が始まった。
土捨て場のあった平坦地にはかつて、プレハブの飯場がたっており、北海道や東北ナンバーの車がとめられていた。
平坦地はいつの間にか、地元政治家が経営する蕎麦屋に変貌した。
工事が行われていた当時、そこにあった看板には、「工事終了後、原状に復する」と書いてあったように思うのだが。
滝川に掛かる橋は健在だった。
流れももちろん、いい流れだった。
対岸に渡ってトラバースするところは、いくらか崩れたのか、補修したあとがあった。
シビト窪に入り、すぐに斜面にとりつく。
シオジの双葉の中に、ちょうどよさげなチチタケが出ているのが見えた。
大木がいくつかあるのだが、葉っぱが見えないので、何の樹だかわからない。
今度来るときには、双眼鏡が必要だ。
多分、カエデかケヤキだと思う。
ひと登りで小尾根の上。
ツガやミズメが生えているので、それまでと樹相が劇的に変化する。
トラバースで再び、シビト窪を渡るところで、小休止。
下界は酷暑だが、沢沿いは、とても涼しい。
その先、道が消えかけていて、ちょっとわかりづらい。
ここからしばらくトラバースだが、基本的に尾根面なので、ツガが多い。
教科書通りでわかりやすいし、大木もあるので、見応えがある。
尾根面を回りこむと、谷面のトラバースになる。
ここで、カツラやシオジの巨木を見ることができる。
これまた教科書通りで、わかりやすい。
明瞭な尾根に出ると、スギ・ヒノキ林。
間伐不足で、下草が全く生えていない。
スギに熊ハギが何ヶ所もあった。
奥秩父のスギ林はずいぶん、熊の害にあっていると思う。
久殿沢に下ったところで、大休止。
小渓ながら整った渓相で、毛鉤を振りたくなる。
滝川を渡る橋は、ワイヤーでぶら下げてあり、ブラブラしていたが、簡単に渡ることができた。
これだと、よほど増水しなければ橋が流されることがなくて、具合がよさそうだ。
蒸し暑く、夕立の来そうな天気だったが、ナメ沢に戻る少し手前で、ポツポツと降り始めた。
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