雁坂峠敗退

【年月日】

2011年3月25日〜27日
【同行者】 全部で7名
【タイム】

一日目 川又(9:00)−突出峠(13:07)−樺小屋(14:16)
二日目 樺小屋(5:50)−豆焼沢源頭(9:28)−地蔵岩(11:30)−樺小屋(12:30)
三日目 樺小屋(5:20)−雁道場(6:16)−川又(7:31)

【地形図】 雁坂峠、中津峡 ルート地図

 これまで、雁坂峠方面に出かけるのは晩秋が多かった。
 何度か歩いたことがあり、早春の突出尾根は、初めてだった。

ブナの道
天然カラマツ

 電車とバスを乗り継いで、登山口の川又へ。
 以前は、秩父湖で村営バスに乗り換えたのだが、今は、遊湯館で市営ワゴンバスに乗り換える。

 車窓から見ると、標高700〜800メートル付近から上に、降ったばかりの雪がついており、ルートの雪深さが思いやられた。
 よく晴れて風もなく、いい天気だったが、西から気圧の谷が近づいているはずだった。

 久々の重荷を背負って、しばらく国道を行き、登山口から山にとりつく。
 雁坂道は、急激な登降をさけて楽に歩けるよう、尾根道とトラバースをうまく組み合わせてある。
 取付き部分は、国道工事に伴う法面崩壊がおきたものか、峠道が崩落したあとに擁壁が築かれており、取り付きの位置は昔とは異なっていそうな感じだ。

 最初はスギ・ヒノキの植えられた県営林。
 すぐに大正11年に建てられたコンクリート道標を見る。
 在郷軍人会と青年団の手によって建てられたものだ。
 大正11年とは、のちの昭和天皇と后が結婚した年だから、おそらくそれを記念して、このような道標が日本中に建てられたのだろう。

樺小屋
カラマツ大木

 水ノ元あたりで早くも、積雪があらわれる。
 その先、登りが急になるあたりからは雪が多く、ワカンをつけて登る。
 雁道場、さらには滑沢の分岐を過ぎて平坦になると、ブナやミズナラの大木を見ながら歩くようになる。

 突出峠からはカラマツの植林地と天然カラマツの森になる。
 雪が一段と深くなった頃に、樺小屋に着いた。
 計画では雁坂小屋で幕営だったが、体力的にも時間的にも、ここが限界だった。

ラッセル続く(大きな写真)
お昼の気温

 樺小屋の水場は5分下るという表示があるのだが、実際にはもっと下らなければならない。
 水場への踏み跡は急傾斜で、この積雪の中では、とうてい下れない。
 従って、炊事・行動用水には、雪を使う。

 小屋に着いてすぐに水作りを始めたのだが、気温は氷点下3度くらいなのに、セパレート型のガスコンロは元気がなく、なかなかはかどらなかった。
 その日と翌朝の炊事用水および行動用水を7人分作るのに、4時間以上かかったと思う。

 いつものように、早く寝てしまった。
 気温が低いので、翌日用の行動用水は、シュラフに入れて眠った。
 寒くはあったが、眠れないほどではなく、ぐっすり休むことができた。

 樺小屋に泊まった時点で、十文字峠周回は断念せざるを得なくなった。
 パーティで話し合い、2日目は10持30分をタイムリミットとして前進することとし、目標を東破風とした。
 雁坂小屋へのトラバース部分に問題がなければ、雁坂峠まで進むのは十分可能だと思われた。

 この日の夜は気圧の谷が通過し、明け方には冬型になるという予報だった。
 夜中に用足しに出てみると、月明かりが明るく、空には満天の星がきらめいていた。
 風もなかったので、まだ冬型になっていなかったのだろう。

 翌朝は、明るくなりかけた頃に荷を軽くして出発。
 青空から雪が落ちてくる不思議な天気だった。

 快調にラッセルしてダルマ坂・地蔵岩分岐と過ぎたのだが、豆焼沢源頭のトラバースにさしかかったところで、進行困難となった。
 枯れ沢にかかる壊れかけた橋の手前が、氷の上に薄く雪の乗った状態になっていた。
 強引に進もうとすると滑落するので、手がかりになる立木のあるところを巻こうとしたが、うまく巻けなかった。

 そこを通過した先は、さらに傾斜が強くなり、ルートがわからない。
 おそらく、岩棚状のところに雪が詰まっていたのだろう。
 ここを通過するには、滑落しないように注意しながら手探りでルートを探さなければならないと思われた。
 それは、初心者を含む同行者の安全を考えると、得策とは思えなかった。

 支尾根を急登して雁坂嶺に直登する手もないではなかったが、なにぶん傾斜が急なので、うまく行ける保障はなかった。
 となれば、退却するしかない。
 峠までさえ行けないのは残念だが、天気のよいうちに引き返したほうがよいと考え、即時撤退と決めた。

 時間には比較的余裕があったのだが、トレースを下るのは早い。
 ガレ場状のところからは、飛龍山から和名倉山にかけての山々がよく見えた。
 せめて甲武信ヶ岳が見えないかと思って、地蔵岩展望台に寄ってみたが、雁坂嶺と破風は見えたものの、甲武信方面は雪雲に隠れていた。
 ここで滑落しないように記念写真を撮り、展望台を尻すべりで降りたのだが、これがなかなか楽しく、同行者が歓声を上げたのは微笑ましかった。

和名倉山を望む
朝の小屋前

 樺小屋に戻ってみると、まだお昼過ぎで、天気も悪くないのに、気温は氷点下5度だった。
 この日も、夕方近くまで、水作りに追われた。

朝日に向かって歩く(大きな写真)
雪燃える(大きな写真)

 下山の日は、川又を9時前に出るバスに乗るべく、少し早く小屋を出た。
 一昨日のトレースが残っていた上、雪がかなりクラストしていたので、ワカンがほとんど不要なほど歩きやすくなっていた。
 登りに5時間かかったルートだけに、3時間半で下れるかどうかわからなかったが、ペースは驚くほど快調で、雁道場まで、1時間もかからなかった。

雪とスズタケ(大きな写真)
陽が昇った(大きな写真)

 結局、川又に着いたのは7時半で、バス停周辺にはまだ、陽光が射しこんでもいなかった。
 まもなく陽が射してき、暖かくなったが、バスが来るまで1時間半近くも待ったこの日のスピートは、意外なほどだった。