金峰山とキヌメリガサ

【年月日】

1989年10月19〜20日
【同行者】 極楽蜻蛉と友人
【タイム】

10/19 廻目平(6:50)−金峰山小屋(12:30)
10/20 金峰山小屋(5:35)−大弛峠(8:45-9:00)
−廻目平(12:30)

【地形図】 金峰山

廻目平のカラマツ林
金峰山からの富士山

 今年二度目の金峰山行。今回は廻目平から登る。

 しばらくは車道。右手には岩峰がそびえ、周囲はシラカバやカラマツの黄葉が美しい。
 西股沢のうぐいす色の流れも澄んでいる。白っぽいカコウ岩からなる沢だからこんなに明るいのだろう。

 歩き始めてすぐに友人がキヌメリガサやクリタケを発見。
 金峰山荘前にゲートがあり、そこから未舗装の林道。
 アキノキリンソウ、マツムシソウ、リンドウなどが、名残の花を咲かせていた。  林道のわきはカラマツの植林。ときどき休憩をかねてザックを下ろし、キノコを物色するが、時期が遅いので、ハナイグチはようやく一本。
 ホテイシメジもいくつか見つかった。

 何といっても多いのはキヌメリガサ。小さいので、誰もとらないのだろう。
 雨が降りはじめたので、雨具を着てなおキノコ狩りをしながら登った。

 橋を渡ったところからようやく山道。カラマツ林に代わって黒木の樹林帯に入ってくるのでキノコは見られなくなる。

 右側の尾根に取りつくが、この日初めての急登のため息が切れた。
 2302mの小ピークを巻いてゆるく下り、再び登りに転じたあたりから、周囲にシャクナゲが多くなり、黒木も低くなって高山らしい雰囲気になってくる。

 さらに登っていくと、オキのにおいがして来、前方が開けて、金峰山小屋。

 小屋には、中年の夫婦がいて、前日増富に下ろうとして表参道を下ってしまい、戻ろうとしたが途中でビバークしたとのことだった。
 様子からして、地図、磁石その他の装備も不十分なようで、よく死ななかったと思った。

 摘んできたキノコを使った食事をすませても、まだ午後2時、小屋番がいないと山談義もできないので、時間をもてあました。
 週刊誌と山の雑誌、小屋のノートをすみずみまで読む。

 風雨はしだいに強まり、荒れ狂うくらいともなった。
 春の混雑とはうって変わって、二階にたったひとりで毛布を何十枚も使って寝た。雨がたたきつける音はいつしかやみ、風のうなる音がいつまでも聞こえていた。

 翌朝は、4時過ぎに目がさめた。
霧氷に飾られた金峰山の尾根
 毛布を片付け、下に下りると友人が今日はガスっているといっていた。
 ご来光を楽しみにしていたのだが、これでは無理。

 ゆっくりストーブに火をつけ、食事の支度にかかったところ、急にガスが晴れ、あたりが明るくなってきたので、いそいでしたくをして小屋を出た。

 5時50分に山頂。雲海のひろがる、まずまずの天気だった。
 それにしても、金峰の頂上は本当にすばらしい。

 巨岩の積み重なった三角点。ハイマツとシャクナゲが背をちぢめて強風に耐えている様子。
 そして、形・大きさともに圧倒的な五丈岩。
 さらに好展望。何ともいいようがない。

 昨夜は多少あられが降ったらしく、氷のつぶが散らばっており、葉を落としたダケカンバには、真っ白な霧氷がついていて、強い風が吹くたびに風花を散らす。

 岩の上にいると寒くて仕方がないので、岩陰で風を避け、雲がさらに晴れるのをしばらく待ってみたが、晴れてくる様子はなかったので、山頂をあとにし、大弛峠へ向かった。

 鉄山をゆるやかに下り、鞍部から朝日岳に向かって登り返す。  ザレたところがあるのだが、金峰のピークは雲の中だった。

 朝日岳から再び長い下りを下っていく。
 ときおり、スギヒラタケが見られたが、カチカチに凍結していた。
 かなり下ると、ベンチのある小広い朝日峠。

 ここには、かつて甲州から信州へ抜ける古道が走っていたはずなのだが、「山道」との表示がある信州側は踏み跡らしきものがあったが、甲州側にはほとんど旧道の面影はなかった。

 朝日峠からほどなく自動車のエンジン音が聞こえて来、大弛峠に着いた。

 峠からは、峰越林道を下った。
 道の山側・谷側ともに崩壊が進んでいて、見るも無残なありさま。
 痛々しく、また憤ろしい。
 友人は徹底的に舗装するしかないと皮肉を言っていたが、私は即刻廃道にすべきだと思った。

 崩壊地にはヤマハハコが多少生えていたが、毎年崩れているらしく、樹木はおろか、イネ科の草さえほとんど育っていなかった。
 路肩を示す標柱までがコンクリートの基礎もろともひっくりかえっているようすは、自動車道としてさえ危険きわまりない道であることを示していた。

 道は大きく蛇行しながら下っていくが、つまらないので、旧道のありそうな沢筋へと下ってみたが、道はなかった。
 しばらくのヤブこぎで、カラマツ林になり、再びキヌメリガサがあらわれだしたので摘みながら行った。

 沢にはムキタケも出ていた。
 それからもずっとヤブこぎで、営林署小屋の前まで行った。