消え行く峠道
- 袖萱から塩ノ沢峠 -

【年月日】

2012年1月15日
【同行者】 単独
【タイム】

大栃沢入口(9:46)−袖萱(11:21-11:22)−楢沢峠(11:53)−塩ノ沢峠(12:52)−駐車地(12:58)

【地形図】 十石峠 ルート地図

大きなトチ
凍った渓1(大きな写真)

 塩ノ沢峠を越える旧県道は、部分的に積雪があって、四輪駆動でようやく走れる状態だった。

 トンネルの手前、県道とスーパー林道が分岐するあたりに軽トラックをとめて、自転車で県道を走り下りる。
 圧雪状態の部分は危険なので、自転車を押して通った。

 やまびこ荘の少し手前、大栃沢にかかる橋のたもとに、大トチ・楢沢峠等々と書かれた立派な道標がある。
 ここに自転車をデポして、軽四駆なら走れそうな林道に入った。

 歩き始めてすぐに、前方から、大きな猟犬が吠えながら走ってきた。
 この時期の里山で最もウザいのは、猟犬だ。
 ハンターなら話せばわかるのだが、犬はわからないから、むやみに吠えつくばかりだ。

 数頭でチームを組んでいる犬だと、こちらに危害を加える可能性が高いが、この時は一頭だけだった。
 とりあえず、近くにあった岩に登ってやり過ごそうとしていたら、ハンターが通りかかり、犬を連れていってくれた。

 しばらく行ったところに、最初の大トチ。
 大きなトチだが、道標に記されている大トチとは別のようだ。

 林道が沢の中に消えると、踏みあと歩きとなる。
 このところの厳しい冷え込みのために、沢が完全に凍結している。
 通常であれば、飛び石伝いとなりそうな渡渉も、氷の上を歩く気になれば、歩いていける状態だった。
 とはいえ、滑るとひどいことになりそうだった。

凍った渓2(大きな写真))
稜線上の大ミズナラ(大きな写真)

 ときおり、立派な道標があるのだが、基本的には、踏みあとと立木につけられた目印テープを頼りに行く。
 道標のない二俣でやや思案。

 左が本流と思われたが、沢が奥壁状になった右の沢に目印テープがついていた。
 あとで地形図を熟読すると、この小ゴルジュを過ぎてしまえば傾斜がゆるみ、無理なく楢沢峠に上がれたと思われるが、1232メートル峰(袖萱)にも気があったので、沢の高巻きほどのひどい傾斜ではあるが、小尾根に取りついて、強引に袖萱をめざすことにした。

 木の根頼りにしばらくよじ登っていくと、人か動物の薄い踏みあともあらわれるが、直上すると、滑落の恐れのない小尾根に登りついた。
 ここに踏みあとはないが、除伐らしき伐採あとがあり、人の手が入ってはいた。
 一応カウベルをつけて歩いていたのだが、落ち葉をガサガサと踏みながら接近してくる動物がいたので、声をかけると、先方は硬直していた。

 急登に息が切れるが、頑張ってカラマツ林の中の袖萱に登りつく。
 展望はないが、樹林越しに浅間山が望まれる。
 この日は高く曇ってはいたものの、まずまず、よく見えていた。

袖萱から浅間山(大きな写真)
大ブナ

 尾根の上はいくらか風が吹いていたので、防風着を着て、東への尾根を行く。
 登り下りはほとんどなく、とてもラクである。
 尾根の北側はカラマツ林で、南側は雑木林。

シャラの木
ウスタビガ

 ここの雑木林も、なかなか美しい。
 尾根の北側に、大きなミズナラとブナらしき大木が、1本ずつ、目を引いた。

 鞍部で、地元のハンターに遭遇して、しばし立ち話をした。
 先ほど出会いそうになった動物のことを言うと、おそらくカモシカだろうと言われた。

楢沢峠の灯籠
塩ノ沢峠の馬頭尊石塔(大きな写真))

 楢沢峠には、小さな石祠と首の欠けた地蔵の石仏があり、立派な石灯籠が一基、置かれていた。
 この峠の位置がわかったので、住居附から地蔵峠を経て塩ノ沢峠に行くルートがとれそうだ。
 登山口にあったのと同じ立派な道標もあって、登山口だった塩ノ沢へは、トラバース気味に沢に下っていきそうな踏みあとがあった。
 道標設置者の意図するルートは、大栃沢右俣を詰めて楢沢峠に至るものであり、大トチは、ゴルジュから峠の間に存在するものと思われる。

 ここからは、比較的しっかりしたトラバース道を行く。地形図にも記載のあるこれが、昔の峠道だろう。
 さっき会ったハンターは、塩ノ沢峠に至る「横道」がある、と言っていたが、その言葉通りだった。

 ところが峠道は、しばらく行ったところで、森林管理道によって消されてしまっていた。
 森林管理道は、岩を削って作られており、峠道がどこを通っているのか全くわからず、しばらくブル道を歩いた。

 ブル道が、地形図の破線とあまりにもかけ離れたところに続いていたので、鹿道を使って斜面に取りつき、しばらく踏みあとを行ってみた。
 しかしそこは峠道でなく、どうにか峠道入口と想定していた地点まで行ってはみたが、峠道らしき道形を見つけることはできなかった。

塩ノ沢峠の山ノ神燈籠
ヴィラせせらぎ

 スーパー林道に出たところ、トンネルの上あたりに気になる目印があったので、入ってみると、切通し状のところに馬頭尊の石塔や石灯籠・山の神の石祠などが置かれていて、ここが塩ノ沢峠だということがわかった。
 そこから雑木越しに、自分の軽トラックが見えていた。