−無南沢峠・石神峠− |
【年月日】 | 1997年12月21日 |
【同行者】 | 単独 |
【タイム】 |
法久入口(9:20)−ブナン沢峠(11:30)−妹ヶ谷不動 |
【地形図】 | 万場 |
明治17年11月、秩父困民党の武装蜂起に際して、農民を動員したとして逮捕された女性がいる。
警察における尋問調書によると、11月2日、彼女は、同じ村の黒沢ウラ、群馬県多胡郡上日野村の小柏ダイと連れだって、三波川妹ヶ谷の不動様にお詣りに出かけた。
この参詣道中には、もう一つの目的があった。
この三人連れは、小松集落を出立して、風早峠を越え、現在は埼玉県神泉村に属する高牛集落と鳥羽集落の民家を訪ね、困民党に参加するように触れ歩いた。
彼女らは不動様にお詣りしたのち、三波川に泊まったということだが、チヨがいつ逮捕され、どういう刑罰を与えられたのかを知る資料はない。
小松から妹ヶ谷不動までを日帰りで歩くのは少しきついので、鬼石町坂原から御荷鉾の尾根を越えて三波川に行ってくることにした。
国道の室谷川出合にかかる赤土橋近くに自動車をデポし、MTBに乗り換えて、法久入口までサイクリング。
チヨはまちがいなくこの道を通ったはずだ。
それだけではない。
同行した小柏ダイは、妙義山麓での旗揚げ(群馬事件)で一網打尽にされた上毛自由党アクティブの生き残り、小柏常次郎の妻である。
法久沢は、連瀑を構える急傾斜の美渓だが、淵は浅くなっている。
突然、屋根の上から、
「いいあんばいです。ブナン沢峠に行きます」
というわけで、屋根の上で作っていた乾燥いもを投げてもらった。
少し登ると、林道。これはスーパー林道ではない。
植林の中をしばしでスーパー林道。
5年前に来たときにはたしかにあった峠道はあとかたもなく、山の神様の石碑も見あたらなかった。
人が住まなくなった山里から、子どもの姿が消え、若者の姿が消え、ついには無住となる。
目の前には、ガードレール付きのブナン沢林道。
かつての峠道は、かすかな痕跡のみ。
再びブナン沢林道に出たところが、採石場。
舗装道路を下って三波川。 不動沢が分かれると、幟が一本立っていて、待望の妹ヶ谷不動。
境内には、本殿のほか、神楽殿のような建物や、芭蕉の句碑など。
お詣りをすませ、ベンチに腰かけて大休止。
不動尊から石神峠へは、おなじみ丸太階段の、関東ふれあいの道。
のろのろ歩いてふたたび稜線。
雲一つない、いい天気。
石神峠から南への道も、林道工事によって、消滅していた。
すぐに大平登の集落。
ここから赤土橋への破線路は、ところどころ石垣で築かれたしっかりした道。
以前法久で、古老から、集落と集落を結びながら山腹を行く道は、かつての鎌倉街道だよ、とうかがったことがある。
道中某所で大量に拾ったヤマナシのおかげで、ずっしりと重くなったザックを背負って、ずばり、自動車デポ地点に下り着いた。
小松集落にある、晩年のチヨが住まったというお堂も、まもなく朽ち果てそうな感じだ。
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