−錫ヶ岳から奥白根−
まだ朝も早いのに、ずいぶんたくさんの人が小田代原あたりで三脚を立てていた。 西の湖入口でバスを降り、外山沢川にかかる橋を渡って柳沢川沿いの林道へ。
戦場ヶ原界隈など、人目につくところは、観光客から自然を守る手だてがされているが、このあたりは一面のカラマツ林。
植えられたカラマツが成長し、それなりに落ちついた風景を作りだしているが、いつかはまた皆伐され、無惨な光景が見られるのだろうか。
林道のわきには、このところの雨で出たものか、きのこがにぎやかだった。 川では、イワナの夫婦が産卵場所を求めて、仲良く遡行していた。
約1時間で柳沢川の渡渉点。 ここからの林道は崩壊箇所が多く、ほぼ廃道だが、道型は残っていた。
最初の小沢を渡る手前で、前方約30メートルほどのところを、体長1メートルほどのツキノワグマが歩いているのを発見。
クマの歩く姿は、力強くて、美しい。 林道はさらに荒廃し、ガレ場の横断がたくさんあった。 ネギト沢への下降点でさらに林道を行くか、それとも宿堂坊西のコルへ沢登りをするか思案したが、先日Nさんが来たときより増水気味なので、沢はパスし、林道をさらにつめることにした。
山の傾斜が少しゆるむと、道がよくなり、避雷針のあるブロック小屋を見て、小沢を二つ渡る。 途中で摘んできたキシメジとヌメリスギタケ、ナラタケのだしを入れた釜揚げうどんだが、だしがよく出ておいしかった。
1874メートルピークの北に回り込むと、めざす錫ヶ岳から前白根にかけての稜線が望まれる。
地形図通りの地点で、林道は終わり。
ここからやっと自然の森。
国境稜線に出てみると、過剰なほど目印が多く、踏みあとも鮮明だった。 西側が開けた中間点あたりから見る萍川源流は、紅葉が進んでいて美しく、仰ぎ見る錫ヶ岳はとてもりっぱだった。 小雨の降り出した錫ヶ岳への登りは急だったが、ササ原で振り返ると、皇海山が遠くに浮かんでいた。
天気も悪いので、今夜の泊まり場である、次の鞍部に急いだ。
錫の水場は水量十分、テント2張は可能だと思われる。
雨は翌朝になってもあがらず、二日目は雨中のスタートとなった。
右側の展望が開け、ガスが流れて錫ヶ岳から皇海山、さらに袈裟丸山までが遠望できる場所があった。
晴れていれば展望のききそうなササ原をトラバースすると、ちょっとした水たまりなどもある、シャクナゲの群生したところ。
1時間ほどで白檜山(2394峰)。展望はないが広い山頂だ。
のしかかるようにそびえる白根隠は、森林限界を超えており、360度の大展望。
三つのピークを持つ白根隠の主峰を下りきったところから、谷へと下降(踏みあとなし)。
少し登ると避難小屋が見え、登山道に出た。
天気が悪いのでハイカーは少ないが、人気のある山だけあって、人影が多かった。
非常に寒いので、早々に下山にかかる。
南西側の急傾斜のザレをトラバースし、切り立った岩場を右手に見ながら、ダケカンバの樹林帯にはいる。
ナナカマドの実が美しく色づいているが、紅葉はよくない。
枯れたキオンの群落を抜けると、シラビソの樹林帯。
大日如来の先で、地形図のルートは通行止めという立て札。
平坦で歩きやすく、気持ちのよいトレイルを行くと、しばらくで六地蔵。
その先で樹林帯が切れ、ガケとしか思えない急傾斜のスキーゲレンデ。 落石と滑落に注意しながら、えんえんゲレンデ下りを続け、「奥日光自然探勝路」という意味不明の看板の立つ自動車デポ地点にたどり着いた。 |