今日は、釣り竿片手の山登り。
南橋バス停近くから深沢に沿った林道に入り、終点から渓へ。
ずいぶん水量は少なく、土砂の流入が多くて、釣りは期待できそうにない感じ。
すぐに出会った、二段の大堰堤にはまいった。
下段にはやけにぐらぐらする鉄バシゴが右側にかかっていたので、難なく越えられたが、上段には手がかりなし。
やむなく右を高巻いてみると上流はちょっとしたダム湖になっていて、下降不能。
しょっぱなからヤブの中の大高巻きでエネルギーの消耗が甚だしい。
堰堤上は岩場だが、下降点を求めて渓に降り立つ。
堰堤下よりは好渓相、感じのよい石も多い。
ただ、土砂の流入がみてとれ、上部でカコウ岩の大崩壊があったようだ。
イワナがいるなら釣れてもいいはずなのだが、やっぱりよそ者にはつれない反応。
たちまちファイティングスピリットが萎縮してきて、情けない。
根がかりで仕掛けを失ったところで釣行欲もあわせて喪失し、遡行に専念。
ときおり小さな岩場もあるが、すべて順層、手かがり・足がかりも不足ないし、水量がないのでシャワークライミングも容易だ。
右岸から小沢が入ると、Bさんに教わった大滝があるはずだ。
下に行くのはパスして、小沢を遡って登山道に出た。
滝の手前には冷たいわき水がこんこんとわいていた。
大滝はななめ上から見下ろす形になるが、水量のわりに瀑勢が強く、とてもみごとな二段二十メートルの滝だ。
この滝を見ることができただけでも、来てよかったと思った。
登山道は滝の上で左岸に渡る。
渡渉点の石に腰かけて一休み。
ここで登山靴にはきかえ、ビクと「ワンタッチ早わざ」をザックにしまった。
登山道は矮小なササ原の台地状のところを、沢沿いに登っていた。
樹林帯とササ原とが交互に出てくるなかを快適に歩く。
大木の切り株が点在するササ原の中に、ヤマトウバナやクワガタソウなどのめだたない花がぽつぽつ咲いている程度だ。
部分的に多少不明瞭なところもあるが、地形図通りの道なのでまちがえることはない。
石垣の堰堤と朽ちた橋を見ると右岸から小沢が入る。
ここはガレているので一度左岸に渡らなければならない。
「深沢神社」の石碑は見逃してしまったが、このあたり堰堤や石垣があって、かつてはずいぶんひと気のある場所だったのだろうと思われた。
ここまで来ると深沢はひとまたぎの細流と化してしまうが、小さな淵もあるからイワナをつれてきてやれば定着できるだろう。
大滝から上を禁漁区にすれば、深沢のイワナは永遠に絶えないのではなかろうか。
左岸側を見ると何ヶ所かの大きな山抜け。
これが中流部の渓を埋めた原因だろう。
地形図を見ると、尾根向こうの黒沢からの林道がこのあたりに這い登ってきている。
ときおり下りてくる霧雨のためにササは水を含んでおり、登山靴の中が濡れてくる。
やがて登山道は左岸に渡ると沢から離れ、カラマツ林の中のジグザグ登り。
足元にはどういうわけか、フイリノゲンジスミレがたくさん生えていた。
息を切らせて登っていくと、荒れ果てた林道に出る。
深沢に土砂を流した原因ではないかとの疑いのある道だ。
ここは北へ。
この林道はこのあたりにカラマツを植えたときのものだろう。
ということは、カラマツの収穫(伐採)のときには復活するのか。
かなり急傾斜な林道は1511.ピークの手前まで続いており、終点から自然に登山道に戻るが、この先にもカラマツ林があり、道ばたの石がとがっているから、一度小型ブルドーザがはいったのだろう。
ナラなどの二次林もでてくるがシカによる食害がはなはだしい。
幹がスプレーで吹いたように真っ赤になっている。
ナラやリョウブも、傷あとには赤い血が流れるものらしい。
1504.ピークの手前らしきところはひどくガレて荒涼としたところだ。
部分的には登山道が消滅したところもある。
その先、尾根の東側を巻くところはこのコースで数少ない平坦な自然林で、ダケカンバ、ブナ、ミズナラなどの壮年木が並んでいる。
メボソムシクイや「ケッケッ」と鳴きながら飛び回っている大きな鳥がいた。
日光に近づいてきたので自然度が増してきたのかと思いきや、すぐにまた食害のあとも痛々しい二次林となる。
右手の尾根が高くなり、ダケカンバの若木の多い古いガレ場をいくつか横切ると、半月峠はすぐだった。
そこからは疎林の中の急な登り。
展望は悪くないはずだが、社山はおろか、中間ピークさえ見えない。
古い立ち枯れを小さなキツツキが体に似合わぬ大きな音をたてて叩いていた。
展望台を過ぎると日光らしい若い黒木の樹林帯。
半月山に着いたのは十時過ぎだった。
ここで腹ごしらえをかねて休憩。
BGMはメボソムシクイだ。
ここから駐車場までの間はササ帯とコメツガの自然林。
ササ帯にはサルの群れがいてこっちを警戒していた。
コメツガ林の林床にはササも少なく、北八ツを思い出させる。
今ごろミドリ池あたりに行けばでっかいウスタケが出ているだろうなと考えながら歩いていると、うわさをすれば影で、道ばたにウスタケが並んでいた。
駐車場から狸山までは軽い登り。
ことし二座目のたぬき山だ。
このあたり、メボソのほか、アカハラやルリビタキのさえずりも聞こえた。
ルリビタキは4月に来たときにも雪の茶ノ木平で聞いた覚えがある。
道路を渡ったところの展望所で最後の休憩。
ここからはブナ、ウラジロモミ、ダケカンバなどが点在するカラマツ林だ。
風情はいいが、中禅寺湖方面からの騒音が聞こえてくる。
茶ノ木平はロープウェーに乗って遠足に来た小学生で大にぎわいだった。
高山植物園の花壇の花が咲きそろっていたので、ひとまわりしてから、私もロープウェーで帰途についた。