浅間山荘の無料駐車場は、無料ではなく500円払う。
すると、日帰り入浴100円引きの紙片をくれる。
警戒レベル1になった浅間山の人気はすごく、次から次へと自動車が入ってくるのだった。
最初は、赤茶色の沢に沿う林道を行く。
道ばたにガマズミやヤマブドウ、チョウセンゴミシなどが実っているのが見える。
左岸に渡ると少しずつ山道らしくなってくる。
カラマツの植林地とミズナラ林とが交互に出てくる。
ツリバナやメギの実も見えた。
木の鳥居をくぐると、不動の滝経由の道と巻き道の分岐。
ここは不動の滝コースを行った。
このあたりの水色は、やや白濁した程度だ。
丸木橋で右岸に渡ってすぐで不動の滝。
10メートルほどの飛瀑である。
滝の上で巻き道と合流して、ジグザグの登りになるあたりから見る対岸の紅葉がみごとだった。
牙山が近づくと周囲が開けて、カラマツの明るい疎林となる。
牙山もだが、ガスが晴れるに従って見えてきたトーミの頭の岩壁の迫力が、すばらしい。
足元は枯れたお花畑で、ホタルブクロ・リンドウ・ヤマトリカブト・マツムシソウ・シャジクソウ・タカネナデシコなどが、わずかに咲き残っていた。
硫化水素の匂いのするところを過ぎると、沢が再び赤茶色になる。
源頭を渡るとちょっとしたお花畑のあとで、すぐに火山館に着いた。
おおぜいのハイカーたちが憩っていたが、浅間山大神の神社に拝礼しただけで、ここでも休まず先を急いだ。
ここからしばらくは、カラマツ・シラビソとダケカンバの樹林帯である。
マイヅルソウの赤黒い実に混じって、ゴゼンタチバナ・シラタマノキなどの実が鮮やかだ。
カエンタケに似た黄色いきのこが多いが、それ以外には何も出ていなかった。
Jバンドへの分岐を過ぎると、周囲が一気に開けて、カラマツの幼木が点在するザレ場状のところとなる。
標高2000メートルを超えると、登山口ではまだ緑色だったカラマツの黄葉も、ちょうど盛りだった。
ガンコウランやクロマメノキが多いが、実ができているかどうかはわからなかった。
見上げる前掛山はまだまだ高い。
前掛山への登りは、地形図では急登に見えるが、トラバース登りなので、さほどきつくはない。
高度をあげるに従って、カラマツもなくなり、足元は、枯れたオンタデと石ころばかりとなる。
後ろを振り向くと、雲海の上に槍・穂高連峰など、北アルプスが見えていた。
傾斜がやや強くなってしばらくで、前掛山の分岐。
ここはやはり、前掛山に行く人のほうが多い。
釜山へは、火口に向かって直登していく。
ここは少しきついが、火口の縁まで行けば、あとは反対側の最高点まで、登り下りは少ない。
とはいえ、火口まで登ると北ないし北西の風がかなり強く、火山性ガスの匂いはきつかったが、中毒しそうな感じはしなかった。
それでも、風邪気味だったため、のどがいくらか痛くなりはした。
踏みあとは火口ギリギリにつけられているので、風に吹かれて転落してはいけないので、いくらか気を入れて歩いた。
火口の中がよく見えるのだが、50メートル以上はあると思われる垂直の丸い穴で、硫黄の噴出物が付着した黄色いところがあちこちにあり、さらにあちこちから少量の噴煙が噴き出していた。
道ばたの岩にふれると温かいので、マグマの上を歩いているのだということがわかった。
最高点まで行ってみたが、特に道標のようなものはなかった。
火口の縁のあちこちに監視カメラや太陽光パネルなどの計測器がおかれてあり、最高点で計測器の調整をしている人がいたのには、ちょっと驚いたが、何も言われなかった。
お鉢回りをしているのか、火口の北あたりを下っている人が見えた。
雲は多いが、関東方面は比較的よく晴れており、榛名山・浅間隠山・赤城山などが足下に見えていた。
長居をすべき場所ではないので、すぐに来た道を戻る。
前掛山分岐の手前を下っていたら、おおぜいの団体ハイカーが足取りも重くのろのろと登ってくるのに、すれ違った。
この人たちのほとんどは最高点には登れないと思われ、途中でパーティがバラバラになるのは目に見えていた。
下りは歩きやすい道なので、ペースがはかどった。
途中、チョウセンゴミシを摘んだりしたが、往復5時間で戻ることができた。