子の権現からは、伊豆ヶ岳に向かって、奥武蔵銀座を行く。
竹寺分岐を過ぎて小ピークを3つ越えるのだが、意外に急な登降となるので、無理せず意識的にゆっくり行った。
周囲はほぼずっと植林地で、見るものはほとんどない。
天目指峠で少し休むが、その先もずっと同じような感じ。
中ノ沢の頭を過ぎ、ナローノ高畑山まで来ると、小御岳が望まれる。
遠望するとなかなか美しく紅葉していて、行く先が楽しみになった。
細長いピークを過ぎると小御岳への急登。
さすがに重荷が肩に食い込んで、周囲を見回す余裕もないが、紅葉は思ったほどでもなかった。
小御岳では休まず伊豆ヶ岳へ向かう。
伊豆ヶ岳への急登を目の前にして、小御岳から急降下するのは悔しいが、転倒しないよう、ゆっくり下りた。
さすが奥武蔵第一の人気を誇る伊豆ヶ岳とあって、山頂には、おおぜいのハイカーが休んでいた。
この日もたくさんのハイカーとすれ違ったが、中高年大パーティには遭遇しなかった代わりに、トレイルランの練習をしているらしきハデハデタイツの男女を何人も見かけた。
ハデハデタイツはいくらくらいするのか知らないが、もし転んであれが破けてしまったら、ずいぶんもったいないのではないかと、老婆心ながら心配になる。
それにしても、トレイルランは何故あのように、ハデハデな格好をしなければならないのか、どうも納得がいかない。
伊豆ヶ岳からは、男坂を下り、長岩峠から県道(もとの国道)に下った。
この日は、松枝の正丸オートキャンプ場で幕営した。
キャンプ場近くではリンドウが咲いており、キャンプサイトにはコガネタケやハタケシメジが出ていた。
コガネタケ
| スズメバチの巣
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道路に近いキャンプ場なので、自動車の音が多少気にはなったが、よく眠れた。
ただ、起床予定の明け方4時半近くになって、どこからか音楽が聞こえてきたのは、耳障りだった。
昨日来た道を登り返し、山伏峠方面へ少し歩いて、大栗沢沿いの林道に入る。
大栗沢で釣りをしていた数人連れの若者がいたので、禁漁だからヤメロと注意したが、素直に従ったかどうかは不明。
林道はずいぶん奥まで続いていて、途中に木馬が設置してあって、珍しかった。
林道終点で小休止した後、尾根への登りにかかる。
尾根の上までは、植林の中をすぐだった。
尾根上も基本的には植林地だが、ときおり雑木林も混じる。
マムシグサの実が鮮やかに色づいており、ウリハダカエデの稚樹がたくさん、紅葉していた。
木馬
| ウリハダカエデ
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落ち葉を踏みながらゆるく登っていくと、武川岳に着いた。
武川岳の山頂は、奥武蔵のなかでも出色の、好ましい空間だと思う。
展望はさほどでないが、雑木に囲まれた小広い山頂広場はいつも暖かく、あまり賑やかでもない。
よく晴れた日だったが、大岳山・日の出山あたりがシルエット状に見えていた。
ここから急降下して妻坂峠。
満開のツリバナが赤く色づいていた。
峠の石仏にかけられていた覆屋 (こちらに写真あり) が吹っ飛んでしばらくになるが、修復されていない。
誰がこれを修復するのか、はっきりしないためだろうか。
自治体が費用を支出すると、政教分離の原則に反するという意見もあろうが、文化財の維持管理と考えるべきではなかろうか。
手製の道標に、峠から大持山まで1時間40分と記されていたが、ここは長い登りになる。
急登が一段落するあたりで小休止したが、その後、パーティの一人の調子が悪くなり、ややスピードダウンした。
20年前には、大持山手前から武甲山方面への展望がよかったのだが(こちらのページに写真あり)、この間ヒノキが育って、西側の展望は皆無となっていた。
大持山の肩からは、北東側が伐開されており、歩いてきた子の権現〜伊豆ヶ岳〜武川岳の尾根をはじめ、奥武蔵方面が一望できた。
大持山も木が伐られており、以前とは見違えるほど明るい山頂になっていた。
小持山へは、露岩を交えた小さな登り下りが続く。
調子を崩した人が武甲山まで歩くのはきつそうだったので、小持山で大休止ののち、シラジクボのタルから武甲山をエスケープする道に入った。
シラジクボのタル付近から見る武甲山は、北側がスギの植林だが、南側の尾根はカラマツの植林で、谷筋と尾根の一部がブナ林である。
植林地も多いが、全く傷のない武甲山は、たいへん立派な山である。
シラジクボのタルからの下山道はやや不明瞭だが、踏みあとははっきりしている。
アブラギクやリンドウを見ながらトラバースしていくと、橋立への分岐。
このあたりは広大な造林地で、ヒノキの苗に食害防止用のネットをかけてあるのだが、ネットのために枝を張ることができず、若木たちは窒息寸前という感じだった。
スズメバチの巨大な巣のある小屋掛けの下で小休止。
スゲ沢出合からは、橋立川の源流に沿う道を下る。
何本かの支流を合わせた橋立川は、渓相の整った秀麗な渓である。
林道終点からしばらくの部分は、シオジやケヤキの大木も見られて、秩父の渓の見本のようだ。
ゆっくり下っていくと、林道の終点。
ここは、かつてのヤマメ道場で、どこの淵でどんなヤマメやイワナが釣れたか、記憶はまだずいぶん新しい。
浦山口の駅に着いたらちょうど、電車がやってきたのはラッキーだった。
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