小沢峠から大仁田山

【年月日】

1996年2月13日
【同行者】 単独
【タイム】

小沢バス停(10:50)−小沢峠(11:25)−久方峠(12:43)
−大仁田山(13:25)−小沢バス停(14:25)

【地形図】 原市場

 名栗川は水量が少ないうえヘドロが沈殿していて、みじめな流れだが、ウグイらしき魚が群れていた。
 小沢橋の下では中年の釣り人が、川虫を網ですくっていたが、荷物のわきにはイクラのパックがおいてあったので、ひょっとするとヤマメねらいの密漁人だったのかもしれない。

 小沢トンネルから青梅に抜ける県道はダンプカーの通行が多くていやなところだが、道路が右にカーブするところから地形図にある沢沿いの古い峠道に入ることができた。
 道ばたには覆屋のある「少名彦命」の石塔が置かれている。
 峠道に少名彦命とはなかなか珍しい。

 通る人が多いと見え、手の入ったヒノキ林の中の道はなかなかしっかりしていて、アオキ、シャガ、ヤブランなどの下生え以外には草ヤブも少ない。
 しばらく行くと7メートルほどの細い滝を見るが、上を走る県道から投棄される空き缶が散乱していて、見るかげもない。

 足元に大型冷蔵庫なんかが落ちていると、いきなり上から冷蔵庫が降ってきたらどうしようと思ってしまう。
 落石は注意していれば避けられるが、投げられた冷蔵庫はよけようがない。
 小沢トンネル入口から小沢峠までは奥武蔵のまあまあ名の通ったルートなので、道標や水場が完備されている。

 小沢峠まではひと登りだった。
 石の祠のわきに設置されたベンチで小休止したのち、大仁田山方面に向かう。二万五千分の一「原市場」には、これから登る都県境尾根に登山道の記載はないが、実際に行ってみると、手作りの道標がたくさん設置された歩きやすいルートだった。
 峠から「成木尾根→久方峠 細田 安楽寺」とある尾根を登っていき、小さく登下降していく。

 植林されていないところに生えているのは、コナラ以外ではモミ、アセビ、カシ類、サザンカ、ヤブコウジなどの常緑樹が多いので、山全体がやや暗い。
 奥武蔵に多い純白のサザンカは、このあたりの名花といっていいほど美しいのだが、さすがにこの季節にはすでに散ったあとだった。

 493mピークは南から巻き、鞍部から北へ向かうようになっているのだが、痛恨の油断から南東に伸びる尾根上の踏みあとに入ってしまい、30分をロスしてしまった。

 正しいルートに戻ってしばらく行くと久方峠に着いた。
 地形図に峠名はないが、飯能市久林と青梅市高土戸とを結ぶ山道の記載されているところだ。
 林道化されていない峠道を見つけるとうれしくなるほど、奥武蔵の林道網というのはすさまじいものがある。

 せっかくなのでここを下ってみたいとも思ったが、ピークハンターの性(さが)というのは悲しいもので、三角点を踏まずに帰る決断ができず、結局大仁田山に向かってしまった。
 そこからはしだいに登りが多くなり、青梅市安楽寺への分岐を右に分けるとすぐに大仁田山入口に着く。

 ここにはなんの道標もないが、去年細田から登ってきたときに通ったので見覚えがあった。
 大仁田山三角点は、相変わらず展望皆無の無愛想なピークだった。
 前回は赤沢集落へのちゃんとした山道を下ったのだが、それだと車道歩きが長くなるので、こんどは北西に急降下する支尾根を押しくだって久林への林道に出ようと思い、ヤブ尾根に飛び込んだ。

 いってみると地形図にあるとおりの急傾斜だったが、シカ道が縦横に走っており、灌木にすがってのずり下りとシカ道利用との繰り返しで、15分ほどで沢におり着くことができた。

 涸れた沢をしばらく下ると仕事道があらわれてき、まもなく鹿ノ戸集落の水源であることを示す立て札の立つ林道に出た。
 あとはのんびりと林道を歩いていけば、バスの行き交う県道だった。

 新興住宅街化しつつあるこのあたりは川遊びをする人のための「有料駐車場」などというものもあって、路上駐車も肩身が狭くなりつつあるが、とても味わいのある馬頭尊や地蔵尊の石仏などが残っていて、これを観賞しながら小沢に戻った。